暑い。

とにかく、暑い。



空は青くお日様は力いっぱい照っている。
ああもういいよ判ってるから、貴方以上に輝いてるヤツなんて居ないから。そんなに頑張らなくても一番まぶしいから。
なんて心の中でおだててみても日は弱まる訳も無く。

せっかくの後輩達への差し入れが形を無くすんじゃないかと不安になって、意を決して駆け出す事にした。





懐かしい校舎、たかだか1つ2つ年をとっただけで追い出されてしまうのだから寂しいものだ。
例え校舎が隣の高等部に移っただけでも、なかなか行く暇もなく随分距離を感じてしまう。
去年一回来たきりで、1年振りに近寄ったテニスコートは、黄色いジャージをはためかせた集団が同じ色のボールを一生懸命追いかけていた。


見知ったヤツが居ないかとキョロキョロしていると、

「先輩!?」

って耳慣れた声。
ワォ。君が一番に見つけてくれるとは思わなんだ。

「ブン太、おはよ!」
「うわぁやっぱセンパイじゃん!」
「元気かー赤小僧!」
「おぅよ!」

挨拶代わりにわしゃわしゃっと頭を撫でる。

「髪が乱れる!」

とキーキーとわめく姿は私の知っているブン太で、懐かしさに更に頭をかき回す。

「先輩!」
「精市…!元気?」

そこへやってきたのは最近ようやく退院した精市。
手術が成功し復帰したと聞いていたので、訪ねてみる事にしたんだけど…

「勿論ですよ。心配性は相変わらずですか?」

精市はフフと笑ってからかうような口調で答える。
ああ、良かった。精市だ。

「よし上等。相変わらず小憎たらしい返し方だ。
 何、今レギュラーが休憩中?」
「はい。」

ブン太じゃないけど、私天才的?
精市に保冷バックに入れておいた棒アイスを手渡す。

「おやつ。溶けるから冷蔵庫入れちゃって?」
「俺今食べます。」
「俺も俺も!」
「マイペースだね、二人とも。」
「だってあっちぃし。」
「だな。みんな呼んじゃおうか。
 レギュラー集合!」

精市が声掛けをすれば集まってくるのは真田や蓮二、比呂士にジャッカル。
口々にそれぞれ“らしい”挨拶をしてくれて、ああ、帰ってきたなぁと感じる。






そしてそこに、見覚えの無いワカメ頭が一人。

「アンタ誰?」

アンタこそ誰だ。
そう言葉にしようとすると、

「OGじゃアホ。敬語つけんしゃい。」

先手を打ちペシリとそのワカメ頭をはたく、ワンテンポ遅れてきた男。

「あ、仁王。元気?」
「んー…まぁまぁ…かのぅ。」

けだるそうな彼、相変わらずすぎてやっぱり笑える。

「ハイ。ちゃんと幸村からお許し出てるから安心して食べて良いよ。」
「どーも。」

ヒラヒラと手を振って仁王だけが去っていった。
仁王だけ、だ。
気づけば周りの奴らは居なくなっており、つまりこのワカメ頭君は残っている訳で。
しかし一向に喋る気配もない彼。
何故残っているのか判らない。
とにかく間が嫌で、口が勝手に言葉を放つ。


「君だったんだね、2年生レギュラーの切原君。
 アイス…食べる?嫌いかな?」

箱を差し出すとこちらをジロリ睨む。
怒らせるような事を言っただろうか。
やはり年下扱いしすぎたのが原因か…?
オロオロとみっとも無くうろたえてしまう。

「センパイ、先輩を一番に見つけたのは俺ッスよ!」

しかし、口を開いたから罵声が飛ぶかと思いきや、彼はパッと顔を明るくし、おまけに思いがけない事を言った。

「ホントは名前も知ってます。…先輩?」
「えっ…」

ニィっと笑うと、私の手の箱から溶けかけのアイス一本抜き取って、

「あとで話させて下さいね!」

って走って行った。
あまりの鮮やかさに口を挟む暇も無い。
溶けたアイスと彼の汗がキラリと光って地面に落ちた。




太陽さんごめんなさい!
貴方より輝いてる人を見つけてしまったようです。



アイス、汗、それから笑顔。





070616 年上キラー赤也。 ダビデといい何といい、2年生ズの相手を年上にさせたがる私が居る… そして立海と名が付けば仁王を出したがる私が居る… そしてゆゆゆゆ幸村が敬語しゃべっとる!?(失礼 レアです、自分の中で。ゲームで先生としゃべる時じゃなくて、身内としての敬 語。 漢幸村に占有されとるのぅ…←アレ 幸村で年上ってどんな風になるんだろう…!いや、かわいいんでしょうねきっと。