「ざいぜーーん」 「…」 「家族で旅行行ってん、お土産!」 今日もクールな情熱がはじける財前光くんに体当たり。 もっとも、お土産なんて口実があるからだけど。 「…これは…?」 両手で差し出すと、一応もらってはくれるらしい。 めんどくさそうに紙袋を受け取ると、ひどくゆっくりした動きで手の平に乗せた。 「小枝のピアス。」 「アホか。」 「かわええやん。」 「まだ食いもんの方がマシや。」 「そんなんネタで買ったに決まっとるやろ。」 出てきたのは小枝がくっついたピアス。 シンプルすぎるソレは、財前の指によって摘まれた。 そりゃあ食べ物のお土産の方が多かったに決まってる。 だけど相手は天才財前くん。 人気者である上に、一筋縄ではいかない。 ならば勝負になるのは、いかに鮮烈に、君に焼き付けるかと言うこと。 「よう使えんわ。」 「折角3ペアも買ったんに!!」 財前はつれなく突き放すと、紙袋にザラザラと流し込む。 だけど、私の叫びに一旦動きを止めて、3ペア?と聞き返した。 「1個足りへんやん。」 「だって財前のピアス穴5つやん。 やからウチの分。」 「せめて全部よこせや。」 「せやかて、財前に買うたら小遣いのうなったんやもん。ウチかてお土産欲しい。」 「なら買うのやめれば良かったやん」 一生懸命の言い訳。 本当はお揃いが欲しかったとか、とにかく気を引きたかったとか、諸々の事情を言えるはずがない。 そんな理由なんて知る由もない財前は、どこから出てくるのか、嫌みったらしい言葉をポンポン投げつけてくる。 意図を汲め、とかそんなこと言えないけど、流石にひどすぎませんか。 「むしろ、ピアス開いてへんのに持っとく意味あるんか?」 「…もう!!」 乙女心の分からんヤツめ! (財前、鞄についとるソレ……枝?) (知らんの、謙也さん。今これ流行ってんねんで。) (ホンマか!?) 090907 ← 一応喜んでるし若干意図にも気付いてる前提で書いていたけども、気付かないのもナカナカ良いとおもった! 小枝のピアスは旅行中に見かけました。ガチで。 財前は5つなので、つけると森の妖精になれますね^^