教室で謙也くんと話していたら、ひょこっと男の子が現れた。 「財前、」そう言って謙也くんが立ち上がる。 彼は近付いてきた謙也くんに鬱陶しそうに会釈しながらも、こちらに視線をよこしてきた。 ああ、この子が噂の“ざいぜん”君なのねと思いながら、 「はじめましてー」 と、とりあえずお辞儀。 そしたら今度は財前くんがずんずん歩み寄ってきて(もちろん私に)、ポケットに手を突っ込みながら目の前に立ちはだかった。 「お世話んなりましたわ、色々と。」 「へ?」 思いもよらない行動に、私も謙也くんも呆けたまま。 彼はそういった反応に慣れているのかそうじゃないのか、気にせずに続けた。 「冬休み、本買いに行ったらアンタ居ったから。カバーかけてもろた。」 「ぎああぁぁ黒歴史!!やめ、ちょ、何で私って…!」 財前くんは何でもないように言って、あの商店街やろと付け足す。 確かに、冬だけ短期バイトしていたけど、まさか身内の知り合いに知られていたなんて。 そりゃ友達のお母さんには何回か会ったけど、そうなんだけど、学校からは遠かった訳だし、それはまさしくまさかの展開。 そもそも面識のないはずの財前くんが、どうして私と知ったのか尋ねると、んーと首を傾げて、 「ぽえっとしとったから?」 と一言。 「しないよバイト中だし!」 「うん、嘘。」 「…嘘…すか…」 「そんな店員覚えんわ。」 沽券に関わるので必死に弁解すると、しれっと嘘だと言う。 もう、何なのこの子…! 「今までで一番きれいにカバーかけてくれた人やったから。」 悔しいんだか恥ずかしいんだか、訳が分からなくなって肩を落とすと、途端に柔らかくなる財前くんの声。 「あの本、表紙が好みで買ったんに、未だに外されへんねん。アンタのせいやで?」 視覚と聴覚を同時に攻められて、頬は否応なしに熱くなる。 私を揺さぶりまくった張本人なのに、財前くんがあまりにもきれいに笑うから、本屋バイト良かったかも、なんて思った。 ブックカバーと笑顔の君 091024 ← やらかした!! 高3の春くらいだと思ってください…! 高校生、基本的に本屋でバイトできねぇよ! でも高校生が良かったんで直しません。 何かアレですきっと親戚の家が本屋なんだと思います。(… 財前と謙也が同じ高校とか多分あり得んけど、そこらへんは総フィルターでお願いします! アイツら高校でもダブルス組んでんぜかーわいーくらいに思ってください。orz ちなみに半分実話。 この間現役高校生の後輩に「カバー掛けてもらいました」と言われましたヽ(゜▽、゜)ノ