キスしたい
キスしてほしい

こんなに好きが止まらないなんて。





「ざいぜん。」
「何スか。」
「財前って何でそんなにモテんの。」
「知りません。」
「うわー、否定しようよ。」
「事実やから。」


ダラっとテーブルにもたれながら、そんなやりとりをした。
相変わらず可愛げがない。
入部した時からそうだったけど。


財前なんてピアス5個も開けてるし、冷たいし毒舌だし、モテなきゃいいのに。




「さんは」
「ん?」
「モテませんよね。」
「うっさい。」


転校生やろ、なんて付け足されると、ますます憎たらしい。
転校生神話なんてマンガの世界でしか通用しないに決まってるじゃないの。

あーあ、何で私、こんな財前が好きなんだろう。
たまらなくなって、ため息。






「ええやないですか。」


私の様子を眺めている彼の、うすピンクの唇がゆったりとした弧を描く。

ああ、キレイだ。

失礼極まりない奴なのに、自然とそう思ってしまう。

見ていられなくて、ゆっくりと顔を伏せる。




「先輩、顔あげて。」
「やだ。」


多分拗ねてるくらいにしか思われないだろうな。

腕に乗せているからか、幾分くぐもった声になる。
そのどちらもおかしくて、少し力を抜いた。






「それならしゃーないッスわ。」


財前はそれだけ言うとむっつり黙った。
コツ、コツ、音がする。
靴音だけが妙に大きく感じるのは、他に何も聞こえないからなんだとぼんやり思った。


ピタ、音が止んだのは私が潰れている机の前でだろうか。


なに、してんだろ財…




前は、と続くはずだった。



ちゅ、


右耳のすぐそば。

遮られたのは思考、残ったのは唇の――。




反射的に顔を上げると、間髪入れずに今度は唇にリップノイズ。


「ざい…ッ?!」
「めっちゃアホ面ですよ、先輩。」


3度目のキスが終わる頃、財前は息絶え絶えの私に微笑んだ。




キスキスキス





(キス、何で、)
(先輩がアホすぎてしたなった。)













091222




両想いなんだけど、片想い→←片想いってもえませんか。
あー可愛い。