巡り巡っても変わらない運命。


それは哀しいものも沢山あったけれど、とても幸福な…少し妬けちゃうくらい素敵なことも存在したんだ。









「べ、弁慶さんのばか!」

「君が可愛らしいから、つい。」

「かっ、可愛くないもん!」


弁慶さんの発言に顔を真っ赤にしている女の子―は私の親友だ。

も遠い遠い時空を越えて、この世界へやってきた。


彼女は私たちと同じ時期に熊野に飛ばされて、偶然水軍の人たちに助けてもらったおかげで何とか生き延びていたそうだ。


夏の熊野で再会した時のことは、今でも忘れない。

二人で目を真っ赤にして、一晩中抱き合いながら泣いたのだから。






そんなは、ゆっくりと―だけど確実に弁慶さんに惹かれて行った。

弁慶さんも、それはそれは溺愛している様子で、いつもを優しく見つめていて、誰から見ても相思相愛の二人だった。



京が炎に喰い尽くされて、私が運命を変える力を手にして。

何度夏の熊野に行っても、二人は出会い恋に落ちた。

違う形でも、違うきっかけでも。

必ず二人は隣に居た。


変わらない運命に絶望した私が、初めてあたたかさを貰ったんだ。











「弁慶さん。」


私は密かに弁慶さんに歩み寄って耳打ちする。


「何ですか?」

「あの子…は、私の大事な大事な親友なんです。

 ―大切にしてくれなきゃ怒りますよ。」


一本指を突き立てて上目遣いに睨むと、


「参ったな…君は鋭いですね。」


と困った顔をしてから、確かに頷いた。


「彼女は、大切な人ですから。」

「はい!ありがとうございます、弁慶さん。」


腹黒策士の弁慶さんにここまで真剣な顔をさせるなら、きっと大丈夫。




手の平をかざしながら空を仰ぐ。




熊野の日差しは、今日も眩しい。






たぐりよせる運命の糸







081129