「ひばりくんひばりくん!」


は何かあるといつも僕の名前を2回呼ぶ。
大概面倒事なんだけど、何かと思って彼女に目を向ける。
僕は優しいからね。


「京都に行きたい!」


…ああ、やっぱりそう。

彼女の口から出てきたのは、今年一番突拍子の無い事だった。




「馬鹿言わないで。何でそんな群の多そうな所。」


君は僕が群が嫌いなのを嫌というほど知っていると思うんだけど。
そもそも修学旅行で京都行ったじゃない。今行ってどうするの。
つらつらと出てくる反論を抑え、要点を絞って言い返す。


「だってあのCM見て行きたくならないの?」


あのCMとはきっとアレだ。
“ナントカの町、京都”みたいなやつ。
そういえば毎年あのCMがあるたびに言ってるよね、京都って。



「ならない。」
「うわぁ一刀両断…」


いいじゃん京都、と食い下がる彼女を後目にコーヒーを一口。
さっさと諦めてくれないかなと思いながら、切り札をぶつける。



「並盛の秩序は、誰が守るべきなの?」


こう問うと彼女はあっと目を見開いてから俯く。
そしてさっきよりずっと重くなった口をゆっくり開いた。


「…ひばり、くん。」
「じゃあ判るよね。」


念を押すように言うと、コクリと頷くとともに「ごめんなさい」という小さな声が聞こえた。






そう言えば僕らはいつもこうだ。
いつからかあの言葉は切り札化してしまった。
彼女に、どれくらい我慢させてるんだろう。
勿論公私混同は嫌いだから、甘やかす気なんて更々ない。
だけど考え出すと止まらなくて、いつもは罰が悪くて見られない顔をそっと見てみる。


それはとても寂しそうで、ひとりぼっちに耐える小さな子供みたいな顔。






「そんな表情、しないでくれる。」
「へ?」


たまらず言ってしまった僕を、はきょとんと見上げる。
ああ、そういう顔も全てだよ。
僕は君に弱いんだから、勘弁して欲しい。




「明日、朝7時に並盛駅。」




その代わり、日帰りだからね。





そんな少し投げやりな僕の言葉で、殺風景な応接室に一輪の花が咲いた。





思い立ったが吉日





て訳で雲雀君です。 雲雀君彼女溺愛!!笑 若干仕事贔屓な雲雀さんになりました。初めてか?