「おはよ…」
いつもよりテンションの低い様子で、が僕に声をかけた。
見た瞬間
違和感。
「…おはよう、」
なんだろう。
何か足りない。
「…メガネ壊れちゃった。」
「―ああ。」
そうだ、メガネが無い。
メガネ
彼女曰く、
電信柱にぶつかりメガネが曲がり、かからなくなって落ちたメガネを自転車にひ
かれて修復不可能になった
そうだ。
全く、何やってんだか。
あまりにも“らしい”理由に笑える。
「大変だったんだよ!!人にぶつかるわ壁に体当たりするわで。」
笑みが漏れたのが聞こえたのか、ムッとする。
「はいはい。
でもそれ自分が悪いでしょ。」
「う…っ」
「とりあえず応接室、行くよ。」
「え?」
キョトンとした返事。
「どうせ授業受けてもムダでしょ。」
僕は無駄な事はしない主義なんだ。
「…まぁ、そう、だけど。」
渋々ながらも返事をされたから、スタスタと歩き始めると、
「や、まって、ひばり…」
なんて不安気な声。
…ヤバイ。
ちょっと可愛いんじゃない。
ただの廊下でさえも、歩きづらいらしくて。
「手。握る?」
「…うん。」
僕の提案にも素直だ。
その上、いつも以上にしっかりくっついてくれてる。
こうやってくっつかれるのって稀だし。
悪く、無い。
「あぁー…メガネ無いと世界がぁ〜」
応接室のソファーに座ると、少しは安心出来たようで、机に突っ伏してぼやいた
。
「そんなものなの?」
僕は見えないって感覚が良く判らない。
「だって、この距離で雲雀の顔判んないんだよ?」
今机挟んで正面に僕が座っていて。
僕はの顔見放題なのに。
―じゃあ、チャンスは平等に与えてあげるよ。
「ここまでくれば、僕の顔見れるでしょ?」
突っ伏して見上げた顔から、約10cm。
「近い近いっ!!」
思いっ切り飛び退いた、その反応はまさしく予想通りだった。
「馬鹿だね。」
そう言って頭を撫でたらくすぐったそうに目を細めた。
あ、やっと、笑った。
そんなに気を張る物なんだろうか。
正面から隣に座り直す。
しっかり手も握ってみたりして。
「これで不安ないよね。」
「!うん…」
「今日は僕が君の眼になってあげるよ。」
にとっては不運かもしれないけど。
今日一日君の隣を占拠出来るんだ。
ハッキリ見えるのは僕だけ。
世界で二人だけ。
さぁ、何をしようか。
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メガネがないとこの世界で生きていけません…
失くすと毎回大騒動です。
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