…あー…… いえーい… ………あー… 布団にもぐり込んでも寝返りを打っても眠りの波は一向にやってこない。 「はぁ…」 仕方なく電気をつけて机に向かうけれど、集中出来ずに考えてしまうのは明日のこと。 ぐるぐる渦巻いて落ち着かない。 「コレ飲んで。」 「ワオ!?」 だから突然だった。 お隣さんの恭弥が、私の部屋でマグカップを突きつけていたのは。 「早く。ていうか煩いよ。夜だから、今。」 「すみません…!って何、コレ。」 「見て判らない?ホットミルクだけど。」 夜無断で女の子の部屋に入るのだってどうかと思うけど、怖いから謝っておいた。 そして恭弥の手元に目を移すと、マグカップが2つ。 白と黒のカップに、黒と白の飲み物。 「きょーやこんなの作れるんだ。」 「ぶっかけるよ。」 「もう言いません…!」 「いいから早く。」 結構誉めたつもりだったのに、恭弥はものすごく不機嫌になってしまった。 これ以上失言を重ねると本気で命が無くなりそうだったので、黙って黒のマグカップを受け取る。 まだ湯気がのぼるそれは、じんわりと私の手のひらを温めていく。 口をつけるとほどよい甘さで、美味しいと思った。 「恭弥はコーヒーなの?私コーヒーの方が……嘘!嘘です!!」 渡されたのは有無を言わさず黒のカップだったから言えなかったんだけど、コーヒーの香りに彼のマグカップから目が離せなくなる。 どうせ眠れないなら勉強したいと思ってそう申し出たら、無言で睨まれたので大人しく引き下がった。 「…あったかい。」 「そう。」 「どうやって作ったの?」 「牛乳あっためたけど。」 「そっか…。 ね、きょーや、やっぱり一口…」 「口移しならいいよ。」 「めっそうも。」 懲りないなと自分でも思うけど、今度は目がマジだったので断念。 あくまでも自分用らしい。 だけど本当は、恭弥には理由なんてお見通しなんだろう。 判っているからくれないんだろう。 「じゃ、寝るよ。」 ゆっくりと飲み終えてカップを机に置くとあまりにもさらっとそんなことを言うもんだから、思わずきちんと置いたはずのそれを倒してしまった。 かちゃんと音をたてたカップは、幸いどうもなってなかったようだ。 だけど私はテンパってしまって、割れなくて良かったと思うよりも、恭弥の一言が頭を巡る。 「ねっ…朝試験…!」 「知ってるよ。ていうか何言ってるのエロ娘。 睡眠取るって言ってるんだけど。」 「あ…はい。」 勘違いでした。 ピンクフォーカスだな、私。 羞恥でものすごく熱くなった顔を押さえて俯く。 ―でも、 「…きょーや?」 「何?早く寝なよ。」 「何、してんの?」 「添い寝。」 普通そんなこと言わないでしょう。 いくつだと思ってるの。 「ばっ…寝れな…「寝るんだよ。」 ドキドキするしどうせ、と言う前に胸板に顔をぐっと押しつけられて、ぎゅうと抱きしめられた。 「ちゃんとが寝るまで居てあげるから。安心して寝なよ。」 あっさり言うけれど。 ひたすら上から目線の彼に「安心出来っこない」と言おうとしたら、恭弥が先に口を開いた。 「何不安がってる訳。僕が居るでしょ。」 「が頑張ってたのは僕だって知ってる。」 「春になったら遊びに行こう。が行きたいとこ、どこにだって連れて行ってあげるから。」 暗闇の中、優しい声と鼓動だけが私に囁く。 「―ほら、らしくないことあんまり言わせないで。早く寝て。」 時々こんな言葉で照れ隠ししながら、また続ける。 ホットミルクより甘い言葉たちを。 何だかもう、泣きそうだった。 一生懸命に伝えてくれることとか、一緒に居てくれる今とか、さっきのホットミルクで、さっきの不安は少しずつ和らいでいった。 あたたかさにとけた
071201 戻 そろそろ受験シーズンだし、ちょうど良いかなぁと思って引っ張り出してきまし た。 去年のセンター前日かなんかに書いてたネタです。(りある 前日かよ!と思った方いらっしゃるかもしれませんが、それは余裕だからとかは有り得なくて、落ち着きたかったからです。 何とかバランス取ろうとしてたんでしょうね。 だからお蔵入りしてる試験ネタ大量にあるんです。 受験はめっちゃしんどいと思います。うん。真面目に。 私には応援しか出来ませんが…! 余計なお世話だ!って思われる方もいらっしゃると思いますが。 頑張って下さい!!