「いっ…!」 軽くノックしてから応接室のドアノブを回すとバチッと指先に走った痛み。 ドア前で悶えてたものだから、雲雀さんがデスクから顔を上げてこちらを見た。 「どうしたの。」 「静電気デスヨ!」 痛さの余り喋り方が変になったけど気にしない。 ぽすんとソファに体を沈めると、何が出来る訳でも無いのに指先をまじまじと見つめてしまった。 「帯電してるんだ。」 さも興味無さ気な雲雀さんもデスクから離れて正面のソファに座る。 休憩するらしい。 私はポケットから小さい静電気除去用品を指にかけてユラユラと揺らした。 「ちゃんとキーホルダーいじってるのになぁ…」 「何ソレ。」 「静電気を取る…って言うんですかね?そーいうモノです。」 「ふぅん。」 僕は静電気になんて負けないよ、と呟いた雲雀さんが少し可愛くて、そして羨ましい。 「あーあ、これじゃあ雲雀さんと手が繋げない…」 静電気が起こらないなんて、羨ましいにも程がある。 ため息を吐きながら拳を握ると、雲雀さんは面倒臭そうに書類を手に取った。 「繋ぐ気無い。」 「つめたッ!雲雀さん真冬の池の氷より冷たい!」 「五月蝿い。」 軽くショックで過剰に反応すると、ピシャリと切り捨てられた。 「だって冬が寒いのは手を繋ぐためですよ!」 「冬に謝れ。」 「ごめんなさ…!」 更に負けじと応戦すると鋭い目で睨まれたので思わず謝った。 「雲雀さん冬好きなんですか?」 もうほとぼりが冷めたかなと思いコーヒーを入れながら話しかける。 「何で。」 雲雀さんは怪訝な顔で返事をしたけど、大丈夫、これは怒ってない時の返事だ。 「さっき冬に謝れって。」 「君が風紀を乱さないから。」 「は?」 安心して理由を述べると、雲雀さんはそっぽを向いて呟いた。 「夏と違ってバカみたいにボタン開けないし。コート長いし。」 「それがヤキモチとかだったら善処しますけど。」 カタンとカップをテーブルに置いて自分の分に口をつける。 苦い。 渋いかも、怒られるかな、チラリ雲雀さんを見ると 「あれ、」 口をつけないどころか立ち上がって窓側に行ってしまわれたよ雲雀さん。 「何で黙り込むんですか星の図ですか雲雀さん。」 「図星だよ、何星の図って。」 「某少女マンガのネタです。」 「コアすぎて判らないよ。」 ムスっとしてるけどどこかぎこちない。 そして 「…てか図星なんですか!」 否定しない。 「五月蝿い黙って。」 やばい、どうしようか。 からかいのつもりだったのに、まさか雲雀さんが肯定してくれるなんて。 とりあえず顔が見たくて雲雀さんのそばまで駆け寄ると、神妙な顔で私の足元を見る。 「静電気は、触れる面積が狭いほど発生しやすいから。」 「へ?」 急に口を開いたかと思えば、難解な事を言い始めた。 訳が分からず立ち尽くすと、 「思い切って掴む方が良いんだよ。」 こうやって、と言いながら私の手を包み込んだ、雲雀さんの手。 それは私のより幾分冷たかった。 「ひ、ばりさ…!」 「冬は、手を繋ぐためにあるんでしょう?」 動揺する私に向かって、涼しげな顔で先ほど私が言ったセリフをそのまま返してくる。 否定した癖に。 からかうような視線にタジタジです。 「雲雀さん、ずるい…!」 ぎゅっと手を握り返すと、 「ずっと繋いでれば起こらないよ、静電気。」 と言って笑った。 僕らの為にある季節 後日 バチッ 「痛!」 「口ほど思い切りが足りないね。」 そっと握ろうとした指先に攻撃をくらってまた笑われた。
080208 戻 できないかと思ったらちゃんと冬の間にできたよ!! 急に素直に書けるんだからツンデレは…! 冬休み前にネタだけあって、しばらく唸って放置したら1日で書けました。 そんなモンだ。笑 ちょっと雲雀さん甘々ですけど、こんな彼も良いですよね!たまには! ちなみに星の図はアレですよ、ジャンヌの作者のヤツですよ。笑