「白石、あんな、私白石のことめっちゃ好きやねんけど、…別れたないけど、別れて?」

『…なんで?』



ディスプレイに浮かぶ、PM10:23。

いつもならダラダラしている時間なのに、私は正座で彼氏に電話をしている。


唐突すぎる私からの電話に、彼は笑っていたのだけれど。



別れよう、そう口にした瞬間、空気が凍った気がした。

携帯越しの声はいつもより少し低くて、動揺よりも怒りを感じる。





これから起こることに少しだけ怖さを覚えながら、始めてしまったからには続けるしかないと深く息を吸った。







「うち、白石に釣り合うと思えへん。」

『アホか。』

「それに……白石やアカンの。」



本当は嘘で嘘は本当。

だったのに、急にあげようとしてた理由が思い出せなくなった。


「だいすき、やけど…」



言ってて、自分の声が震えてるのに気付く。

本末転倒だ、ああ、どうしよう。











『あんまおもんないわ。』


思わず携帯を下ろしてしまいそうになったその時、刺すような声で白石は私の言葉を止めた。


「え、」

『うちのゴンタクレにサプライズ起こしたばっかや、気付かん訳ない。』

「う、わ。」


失念、そういえば遠山君の誕生日は今日だった。

高校生になっても仲が良いんだな、なんて頭の隅で見当違いなことを思う。



『ちょおコレは心臓悪いで。』

「ぜ、んぶ嘘やったらどないするん…?」


彼は聞こえるように溜息を吐くと、非難めいた声で私に意思表示。

安心したくせに何だか面白くなくて、わざとひねた物言いで返せば、的確な言葉で私を追いつめた。


『お前の嘘と本気くらい、ちゃんと判断出来るわ。

 だいすき、なんやろ?』

「っ…!嫌いや!」

『ん、今のは嘘、さっきんはホンマやな。』



白石は笑いを堪えるかのように、


俺んコト大好きで、絶対別れたないんやな


なんて囁く。




「そんなんずるい、」

『間違うとる?』

「白石のあほ、好きに決まってるやん!」

『―!』




あと少しで泣きそうだった。






ブツッ

少し乱暴に電話を切る。





届かなかった白石の言葉を聞かなかったことを、私はいささか後悔したけれど、

それよりも圧倒的な恥ずかしさとか嬉しさで熱い頬を、シーツに埋めるのだった。






好きと嫌いと本当と嘘と









090415











時期ネタをやらかしてみました。
遅いですね。
誕生日祝いはこのままじゃフェードアウトだなぁ。
おめでとう白石!(今更