マンガのワンシーンを読んだだけで、彼とのアレコレを考えるなんて、馬鹿じゃなかろうか。

それでも思い浮かぶ彼の横顔に、もはや病気かもしれないと思う。



しらいししらいし白石白石しらいし、



「すき、だなぁ。」
「何が?」
「……何がだろうね。」



突然思考に乱入してくるのは是非ともやめて頂きたい。

そして、踏みとどまった私には盛大な拍手を贈るべきだと思う。


にしても、呪文のように念じ続けていたら、本当に出てきたから驚きだ。
アレか、会いたくなったら念じれば良いんか。
思わず非現実的な考えがよぎり、頭を振る。

白石はと言えば、こちらにゆっくりと近付いてきて前の席――クラスでも有名な美少女の席に腰掛けた。
本人が居たら卒倒してるだろうに、残念だ。



「も読んどるんやな。姉貴も買うとったで。」
「ああ、うん。」
「これってイケメンがいっぱい出てくるんやろ。誰がタイプなん?」
「……は?」


何しにきたの、と言う前に勝手に話を進める白石君。
ちょっとちょっと。

彼はパラパラマンガでも読むかの如く片手でぞんざいにページをめくって、私に笑いかけてくる。


「このクール系の他学科のヤツ?それとも良い人系の方?」
「―腹黒さみしんぼの黒髪。」
「…へぇ、意外や。」


仕方なしに答えれば、目をまんまるく見開いて失礼な言葉を吐いてくる。
私の好みなんだから仕方ないじゃないか。
意中の相手とは言えども、思わずムッとしてしまう。



「そんなに?」
「かなり。こういうタイプが好きなん?」
「マンガなら。」


だけど彼はさほど気に止める様子もなく(気付いていないのかもしれない)、逆にしつこく聞いてきた。不審なほどに。
何なんだろう、本当。

理由が読めないまま彼の言葉を待てば、トドメの一言が放たれた。



「じゃあ、現実やったら?」
「…何でそんなこと聞くの?」
「質問返しはアカンやろ。」
「じっさい、ねぇ…」


言葉に詰まる。
言えるか、アンタですなんて。

なんて答えるのが正解、なんだろう。


「もしかして、一番近いんはウチの財前…とか?」
「違うよ馬鹿。」
「バカはアカン。」
「アカンばっかじゃん!もう何なのさっきから!!」


勢い任せに机を叩くと、教室全体が揺さぶられるような感覚に陥った。
何がかなしくて、好きな人に他の人が好きなんだろ、なんて言われなきゃいけないんだろう。


「せやかて不安やん。望み薄とか御免やし。」
「え?」
「好きや。」
「……だめ、泣きそ。」




そんな少女マンガみたいなこと




許されちゃって良いんですか?



(ちょ、焦ったわ。)
(女の子ってそんなモンだよ。)








090918












このマンガが何か分かった方には1コケシさしあげます。笑
一時期騒いでたから分かるかもしんないですね。ヒントは文中に存分に表れてます。