人気者は前の席に行くと大変だ。

たとえばプリントを回すとき、後ろを向くタイミングを狙って、多くの女子が彼を見ていることに、本人は気付いているのだろうか。
ジリジリと熱い視線を送られて、居づらくはないのだろうか。


彼女たちを見ているのも面白いけれど、私とてしょせん同じ穴のムジナ。
彼を目に写すことに幸せを感じる安い人間なんだ。

違うところと言えば、クラスの子たちのように近寄ろうと思わないことだろうか。

白石君はすごい子だ、人望も厚いし仕事もこなせる。
だからこれが分相応。
アイドルみたいなモノなんだ、本気になると痛いメ見るだけ。








「さんて、いつも何見てるん?」
「…え?」


不意打ち、だった。
のろのろと帰り支度をしていたから、私の目の前で止まるなんて友達の何ちゃんだろうと思っていた程度で。
まさか、目の前に白石君が居るとか白昼夢?


「振り返る時、いっつも心ココにあらずーなかんじでどっか見とるから、面白うて振り向くの楽しみやねん。」
「…そんなアホな。」
「ウソちゃうで。気になんねん、さんの世界ってどうやって写っとんのか。」


逃避したいところだけど、どうやらこれは現実のようで。
固まったままじゃいけないと何とか返事をすると、キラキラ笑う白石君。

その笑顔につられて思わず口をついたコトバは、彼の頭を困惑させることに成功した。


「…前方あたりが明るく強く。」
「は?」




  光ってます





その光に今日少しだけ近付いた。


いつかは“白石君”と言えるかもしれない。














091231