私は自他共に認める癖というか習慣がある。
それは、ほぼ毎日お弁当に入ってる玉子焼きは端っこに避けておいて、必ず最後に食べること。


そんな特筆するほどのものではないと思っていたけれど、かなり沢山の人がつっこんでくるので、ああ、これって不思議なんだと自覚した。


本人の理由としては、甘いからっていうことだけだったんだけど――。






今日は友達がそろいもそろって委員会で、渋々一人で食べていた。
つまんないのなんて呟いても、返事はない。
クラスのざわめきが五月蝿いだけ。

だけど一人で食べたってお弁当は美味しいからすごいなぁと感心した。



ぼんやり考えながら食べ進めていると、ガタ、と近くから音がした。
反射的にそちらを見ると、斜め前の白石くんがイスを引いて自分の机を漁っているところだった。

彼は目当てのもの――テニス雑誌だろうか――を引き抜くと、くるりとUターンした。
唐突だったため避ける術もなく、ばちっと目が合ってしまう。
やばい、気まずい。

すぐさまをお弁当に視線を戻し、ウインナーを1つつまんだ。



「へぇ、自分玉子焼き最後までとっとくん?」
「へ?」


驚いたことに白石くんはまだそこに居て、あまつ私に話しかけてきたりするものだから、また白石くんを見上げなければならなくなった。
私の居心地の悪さを知ってか知らずか、彼はぽつんと隅に追いやられた玉子焼きを見て、フッと笑った。


「かわええな。」


口に入れた玉子焼きが喉を通らない。
彼の言葉はひときわ甘くて、ようやく飲み込んだソレは味がしなかった。
弁当箱には、未だに黄色い玉子焼きが1つ。


「明日は友達と食べれるとええな、」そう言いながら戻っていく白石くんの背中を呆然と見送る。

ああ、最後にする理由が増えてしまった。





さいごはあまいたまごやきで。












100327




当時の私には、白石がこういう風に写ってたんだなぁと思うと不思議です。
今の私には書けまい。
白石はイケメンですね。本当に。キラッキラしすぎだと思う。