ー!」
「…金ちゃん?」


練習メニューと落書きまみれの黒板を消す私の背中に、クラクションばりの大きな声がぶつかった。
誰?なんて言うまでもない、ウチのスーパールーキー君だ。


「どないした…んっ?!」


振り向くと同時に今度は身体に強い衝撃。
頭一つ小さい彼は、私の腰をガッチリとホールドして、キラキラとした瞳を向けてきた。


「あんなー、今日クリスマスやん!」
「ああ、せやねー。ところで金ちゃん、ちょお苦し…」
「そんでな、プレゼント買うてきてん!」


ぎゅうぎゅうと力を強める腕に息が詰まる。
だけど、それを伝えようにも遮られてしまうし、何より嬉しそうな笑顔には勝てそうにない。


と言うか…


「プレゼント…?」
「うん!」


彼から意外な単語が出てきたことに、ポカンとしてしまった。
首を傾げる私に、金ちゃんはこっくりと頷いて、右手を私に突き出した。
受け皿のように手を出せば、じゃらと金属音。


「サンタのキーホルダーやで!」
「わぁ…」
「かわええやろ?」


手のひらには、ちょこんと赤いキーホルダー。
私の方を向いてにっこり笑うサンタのおじさん。

サンタの可愛さはもちろんだけど、まさか、金ちゃんが何かくれるなんて思っても見なかったので、目を白黒させてしまった。





「あとな、」
「え、まだあんの?!」
「うん、たこ焼き一緒に食べよ!」


そんな私の心を知ってか知らずか、金ちゃんは「でも、はよ渡したかったから、謙也たち置いてきた!」と満面の笑み。
ああ、降参だ。


「もう…金ちゃんは、うちをどれだけ喜ばせば気が済むん。」
「あ、わろた!ワイ、が笑ってくれたらええねん!」
「っ?!」


参りに参った私に、次々と殺し文句が飛び出す。
直球な表現をする金ちゃんに、心臓がついていけない。


彼こそが、幸せを運ぶサンタに違いない。


「あ、たこ焼き冷めてまう!、早う早う!」


私がどぎまぎしている中、金ちゃんは金ちゃんで大事なたこ焼き部隊のことを思い出したらしく、ハッと顔色を変えた。
どうやら迎えに行くつもりのようだ。暖かい手がサンタごと私の手を包む。


「金ちゃん」
「ん?」
「おおきに!」


だったら私も、笑顔を贈ろう。
金ちゃんに負けないくらい、繋いだ手に思いを込めて。






おおきに、マイ・サンタ!











091225



というわけで、メリクリです。
実は3年やってて初のクリスマス夢なのではないでしょうか。
キーホルダーが既出だったことに今更気付きましたが…逆だしいいですよね。
キーホルダー好きなんです。らぶ。
金ちゃんはネックレスとかじゃないよなぁと思って。


この後、四天テニス部はどんちゃんくりすますぱーちーです。