仁王の事が大嫌いだった。 取って代えられる女の子達が、それでも尚アイツを好きになるのかが不可解だった。 アイツの隣にはいつも髪が長くて色っぽい女が居た。 “仁王君は髪の長い子が好きなんだって。” そんな噂が学校で飛び交った。 だから私は長かった髪をバッサリ切った。 「なんじゃい、それは。」 「は?」 「髪。キレイだったんに…勿体無い。」 「あそ。」 残念がる仁王を見て、少し笑った。 周りにいる笑顔の女の子、明るい女の子、そんな人に反発して素っ気ない態度を取った。 皮肉ばかり吐いた。何もかも矛盾させた。 全部全部変えた。 ―何やってるんだろ、私は。 フッと、とてつもないムナしさが襲ってきた。 全部がどうでも良くなって、屋上に身を投げ出す。 ぁー、数学ヤバいかな。 あとでジャッカルに教えさせよう。 そう思うと、ほどなくして日の暖かさにうとうとし始める。 きっとメイクだとか、緊張だとかで疲れたんだろう。 そのまどろみに抗わず目をつむった。 だけどその心地よい眠りは、すぐさま日の陰りをもたらした来訪者によって邪魔された。 「おぅ、。」 何でこういう時に限って現れるのか。 「…サボって良い訳?」 「お前だってそうじゃろ。」 ドカッと隣に座ると、私を見下ろす。 …見下されてる気がする。 ムカついたのでむくりと起き上がると、バチッと目が合う。 また、企んでる眼。 見透かそうとするこの眼から逃れたくて、また悪態ついた。 「私は良いんデス。誰かさんと違っていつも真面目に生きてますから。」 「なーんか、最近冷たくなったのぅ。」 「どうも。」 それは誉め言葉だ。冷たくしてるんだから。 私、嘘つくの得意なんだな。 「髪、切ったな。香水つけた。」 「…そうですが何か。」 仁王の顔見てたら顔が紅潮しそうで、フイと顔を背けると 「のぉ、ツンデレでも狙ってるんか?」 …難解な言葉が降ってきた。 「は?」 「ジョーダン。」 仁王は肩まである私の髪の毛先を弄ぶ。 無言で振り払っても、また触りだすから放っておいた。 それに気分を良くしたのか、鼻歌なんか歌い始めて、もう何なんだ。 お願いだから放っておいてほしい。 何を考えているんだろう。 何がしたいんだろう。 予測なんて出来ないこの男なんだから、次に出てくる言葉も、私を当惑させるには充分すぎるものだった。 「随分、俺色に染まったのぅ。」 オレイロ? 「普通おらんぞ、好きなタイプの噂が流れて逆にするヤツ。」 クククと喉で笑って私を見据える。 「―何の事?」 「俺は髪の短いヤツが好きじゃし?ケバいヤツは好かん。」 「…それがどーした。」 「、お前さんみたいなコがタイプじゃ。」 「は い?」 好きなタイプ? だっておかしいじゃないか。 しらばっくれるつもりで居たのに、反応してしまった。 「俺を欺こうとしたんだろーがムダやったの。」 「別に、仁王にあわせた訳じゃない。」 必死になって取り繕おうとする。 冷静さが無くなっていく。 「しょうがないやろ。俺の理想が目の前に居るんじゃ。 しかし…本当にやるとは思わんかったが。」 本、当、に? 「まさか、アレ…嘘?」 「当然。言ったじゃろ、俺色。」 「ちっが」 強い目が私の言葉を遮る。 「俺のコトバを反対にしたのも、影響されたって事。 お前が変わった原因は、俺。 他の誰でもない、俺が染めた。」 「有り得ない…!」 「キレーに引っかかったの。」 意地の悪い顔で仁王は笑った。 それは私の好きな顔だったから、言い返す言葉も見つからなくて 「うざ…」 と呟くだけしか出来なかった。 「で?」 「…“で?”?」 「言う事は。」 求めてる言葉は判ってる。 だけどそう易々と言わされてたまるかってんだ。 「無いけど。」 「そこまで俺が好きって全身で言っとるのに、俺には伝えんと?」 ―おそろしくイヤなヤツだ。 触れられた頬が熱い。 いつまでも言う気の無い私に業を煮やしたのか―まさか余裕が無いとは思えないけど―、仁王が先に折れた。 「まぁ責任取って、最後の仕上げまで染めちゃる。」 仁王が耳元で、息がかかるほどの近さで囁く。 「全部俺に染まりんしゃい。」 あぁやっぱりアンタは詐欺師だ。 「…だいきらいだ、…雅治なんか。」 「素直じゃないは、嫌いじゃなかよ。」 いいよ染まってあげる。 もっともっと染めて。 もっともっと貴方でいっぱいにして。
07/03/27 戻 仁王さん大ブーム中です。再。(去年の今頃…はミュか。去年の冬くらい。 大ブームっていうか…惚れ? 最近仁王様ネタしか浮かびません。(重症 だから多分ちょくちょく更新します。 そのうち立海ページとか出来ちゃうかも… ていうかツンデレですよねこのこ。 結局甘しか無いんです…。