仁王雅治。 ルックスの良さに人気は高い。 顔が良い。そう、それはもうモデル出来そうな位に整っている。 おまけにクール。 女の子たちがきゃあきゃあ言うのも判らなくはない。 だからと言って冷たくされたくは無いけれど。 つまり普通に考えて、私は異色かもしれない。 私が好きなのは、彼がオフからオンになる瞬間。 もちろん一般的な女の子の感情も持ち合わせているから、かっこよさだって要因の一つだけど。 目つき、口元、動き…どれを取っても明らかに違う。 全てが変わる、本気になる。その瞬間に強く惹かれる。 飄々とした態度から本気になる瞬間が、たまらなく嬉しいの。 そのことを休憩中に寄ってきたブン太に話すと、 「はぁ?意味判んねえ」 と一蹴された。 どうして見入ってるんだ、って話を振ってきたのはそっちじゃない。 「冷たいなぁ…」 「だってよー、何フェチだよそれ。」 「うーんと…ギャップ?」 「何かもうファン通り越して親みたいだな、お前。」 「そうかなぁ。」 いつも相談に乗ってくれている彼でさえも半ば呆れ気味。 そんなの自分でも判っている事なんだけど。 「そんなささやかな幸せで良いわけ?」 ブン太は小さくため息を吐いて言った。 「ささやかじゃない!」 その言葉に、思ってもみないほど大きな声が出た。 だってそれは興味が無さそうに過ごす貴方が夢中になれるモノだから。 もし彼がテニス以外で本気になれる事が少ないとしたら、それはとても大きなモノな訳で、幸せな事なんだから。 仁王君の幸せが私の幸せ それはとても偽善めいた言葉かもしれないけど、確かに芽生えた気持ち。 それを見られるのは本当に幸せな事だと心から思うから。 ちっともささやかなんかじゃ無いの。 「あーわーったわーった。ごめんごめん。」 「あ、いや…こちらこそ…ごめん」 「何つーかさ、羨ましいな。」 「え?」 ブン太は苦笑すると空を仰いだ。 「丸井、練習始まるぜよ。」 「あ、仁王。」 ドキリと胸が跳ね上がる。 仁王君がフェンス越しに近寄ってきて、ブン太にだって判っていても少し緊張した。 「サン…やったか?何か随分必死に叫んどったの。」 なのに、彼はこちらを向いた。 声をかけられた事、更には名前を覚えられてた事に感動する。 彼と会話なんて、数えるほどしかしたことがないから。 あまりにビックリして言葉に出来なくて、それを見てブン太が苦笑しながら代わりに答える。 「本気になれるものがあるのは幸せって話。 おっまえ愛されすぎ。」 俺?と小首を傾げる仁王君。 バカブン太。一言余計だ。 目線が絡み合って、私は言わざる得ない状態。 「テニスしてる仁王君の本気さが、いいなって。」 あまりストレートに全てを語ると、ストーカーちっくになりかねない。 オブラートに包んでそう伝えると、彼は少しだけ目を見開いて 「初めてじゃ、それは。」 と呟いた。 「仁王君、丸井君!真田君が怒りますよ!!」 遠くから聞こえる柳生君の声に、仁王君はパッと顔を戻す。 「やべっ、」 「じゃあな、サン。」 「ああ、うん。頑張って。」 オフの方も、やっぱり好きだな。 なんて遠ざかる背中を見てぼんやり思った。 コートに戻る途中、ブン太がコソッと耳打ちして、仁王君がこちらを振り返って小さく笑った理由を、私はまだ知らない。 「本気になれるモン、増えるかもな?」 「…さぁな。」 オンオフ切り替え
戻 070825 ガウチ君が非情のテニスで 「あぁ」 って言った後に、ラリー(仁王の打ち方をする)に入る瞬間にいつもドキリとします。 仁王のテニスにかける熱が、格好良いと思うのです。 …ギャップ萌え?笑 携帯見てたら出てきてビックリしながら加筆修正しました。(をい 5月から放置してた気がする…笑 見方によっては 仁王←彼女←ブン太 にもなりますね!(あれ?