むむ…何だか変な感覚だなぁ…

ここにこうしてやって来て、数日経つけれど、
町にはふつうに店があって、名前も知らないマンガがあったり、見知ったファーストフードがあったり。
見たことも無い番組と、大好きな歌手と。


頭が混乱しっぱなし。

―でも


「かっこいー…」

マンガの中の男の子は普通にステキなのです。
それは普遍の真理なんだなと思って存分にニヤける。

しかし…マンガの中でマンガを読む。
何だか幾分変な気分になった。
いやここはマンガの世界だけどマンガじゃ無い訳で、世界は3Dでフルカラーで質感も匂いもある訳で…?


ああダメだ、混乱する。




「何読んどる?」
「に、にお!?」

一人瞑想にひた走っていたところに現れたのは、相変わらず心臓に悪い程美形な仁王雅治。

「少女マンガ…お前こんなん読むんか?」
「読みますぅー乙女ですからぁ」
「そのしゃべり方ウザい」
「…判ってらぃ。」

からかいの言葉に思わず唇を突き出して応えたけど、…ええ自分でも苦しかったさ。
ぼやきつつ、塩崎君がアップになったページを眺める。うん、やっぱりかっこいい。


「そんなんより、俺の方がかっこよかよ?」

正面からマンガを取り上げてニッと笑う彼は確かに―いや、むしろ数千倍―かっこ良く見えた。

「この塩崎君の方が優しそうでペテンじゃなくてステキだもん。」

うわ、つまらない意地だな。
言うことに欠いてコレか。
ただ単にコイツの思惑通りだと認めたくないだけ。

「そんなん紙の上の話、だろ?」

きっとそんな私を見越しての、言葉。

たった一言、彼にとっては駆け引きでしか無い言葉に、

ズクンと胸が痛んだ。



イツカハ別レルモノナラバ



「?」


ああ、その通りだ。
所詮は紙の上の話。
いずれは紙の上に戻ってしまう貴方に、私は恋してしまったの。
マンガを読んでかっこいいと騒いでいた時とはもう違う。
ここで生きる、生身の仁王雅治を、私は以前と違う目で見つめるようになってしまった。

どうしよう、
どうしよう。


「バカだなぁ、紙の上だったから、好き勝手騒げるんじゃない。」

自嘲気味に響いた声は震えていた。


立ち上がるのと、涙が出るの、どっちが先だっただろう。




気づかなければ良かったと、




誰かたすけて

涙がとまらない




071020 中途半端に思いついただけ。 特にシリーズとか連載とかにする気は無いです。 まだ大人の恋は判りません。 笑顔でサヨナラ出来る程、大人じゃありません。 だけど未来に気付かない程子供でも無い。 仁王は彼女を想ってるし 彼女も仁王を想ってる。 それだけは事実。 報われない(現段階では少なくとも)話はあまり書かないタチなんですが、まだありますちなみに武くんで。 だからかなり毛色が違う感じ。 基本は幸せボケがモットー。 サイト仕様にする時いつも線のタグを見て、hrでホルンだ!と思ってますはい下らない。