初デート。
勢いで言ってしまった“遊園地に行きたい”は確実に自分を苦しめた。

特に服装と言う面に於いて、だ。


スカートじゃ動きにくい

ヒールは何か起きた時対処できない

かと言ってジーンズにスニーカーなんて嫌すぎる

ジーンズが嫌いな訳じゃない、ただ基本的にソレが普段着なんだ、いつもより着飾らないとやる気無いと思われるんじゃ?

せっかくなんだからバッチリキメて可愛いって思われたい。


なんて


ああでもない、こうでもない



考えて考えて考えている内に、夜は更けてく、明けていく。




結局無難にジーンズを履き、靴擦れを起こすことの無いスニーカーにがぼっと足を差し込んだ。

待ち合わせ場所、そわそわするのはちょっぴり後悔してるから?

でも背に腹は変えられない。
デートがおじゃんになったらそれこそ笑えない。

だけどやっぱり、そうだとしても。

ぐるぐる巡るマイナス思考。

ああ男子ずるい、ズボンが基本だし彼はお世辞で無く何でも似合うし、自分自身可愛い洋服は好きだけど…羨ましい。
だんだん八つ当たりみたいになってきた。

あっちの子やそっちの子みたいに、スカートにブーツ履いて、可愛くすれば良かったのかな。

何にせよ、今更考えたって遅いけど。





ずんと重くなった気持ち、
それに加えられたのは物理的な力。

「ぎゃっ!」
「おはよ。」
「雅治…おはよう!」

頭の上、腕の主は待ち合わせ10分前に到着の彼。

「待たせた?」
「だいじょーぶ!」

うわぁデートの会話だ、なんて思いながらめいっぱい笑ってさっきの表情をごまかすけど、駄目だ、バレバレに違いない。

私のぎこちない笑顔を見ると、雅治は髪を一撫で、笑いながら

「寝癖、ついとるよ?」

と言い放った。

「え、うわ。本当だ!」

慌てて手櫛で整えるけど、効果はまるでない。
続けて彼は頬に手をあてて、目の下をすっとなぞった。

「目の下、ちょっとクマあるし。」
「ぐ、ちょ!」

くすぐったいやら恥ずかしいやらで身を捩る。

そんなコトより、ダメ出しされてるよ。
やっぱり、というかそれって洋服うんぬん以前の問題じゃん。
情けない、このまましゃがんでうずくまってしまいたい。





「でも、」

必死で立って、それでも俯いたままの私。
幾分柔らかくなった声に顔をあげると、

「俺と沢山遊ぶこと、考えてくれてうれしい。」

ぐっと顔が近付いてきて、ちゅ、と頬に熱。

「いっぱい考えて、ギリギリまで悩んだんじゃろ?」

今度は頭をわしゃわしゃと撫で回して、笑顔。

「スカートは次ん時、な。」

一言一言が、私の後悔や落ち込んだ気持ちを消していく。

「ほら、行くぜよ!」

彼が入園ゲートに向かって歩き出す。
私の手を引いて少し早めに。



「勿論今日も、可愛い。」

と、歩きながら呟かれた言葉は、ちゃんと耳まで届いてた。



今日のデートの為に悩んだ時間は実に5時間16分





080530 ネズミ海に行く時に考えたネタ。(と言うと書いた時期がバレバレ←1個前の題名が決まらなかったせい もちろん友達と行ったけどね! いやしかし…長いよ5時間。笑