「仁王の血液型は何ですか!!」 盛大な音をたてて引き戸が叩きつけられる。 隣のクラスの―かつ俺の恋人であるは、放課後のひどく静かな空間を、渾身の力を込めて壊したのだった。 「何じゃ不躾に。」 「良いから!てか、ABだよね!?馬鹿!!」 「…」 雰囲気をへし折られて少し不機嫌になる俺。 そんなのお構いなしの彼女は、ギッとにらみを利かせると、人の血液型に罵声を浴びせた。 「ふぉぉ…何でO型なんだあたし…!」 更には頭を抱え、勝手にしゃがみこんでブツブツと一人で呟き始めた。 暴走特急にも程があるだろう。 「確かに、ABじゃけど。」 何度名前を呼んでもそのまま動かないので、仕方なしに彼女の元へ向かい、膝をついて視線を捕まえる。 「それがどうしたんじゃ。」 「…劣性遺伝子。」 「は?」 「劣性なの。」 少し呆れながらも聞き返すと、小さく続けられた、「わたしが」という一言で、ようやく意図が少しだけ分かった気がする。 「…生物?」 おそらくキーとなるであろう授業名をあげると、彼女は不服そうに頷いた。 「つまり、俺とお前さんの子じゃAかBの子供しか生まれんってことか。」 生物の遺伝だったか何だったか…まぁとにかくソレは、つい最近習ったばかりで耳に新しい。 正確に覚えてないのはどうなんだと柳生あたりには言われそうだが。 たしか、O型とO型なら100%O型の子供が生まれるとか、A型とB型でAB型が生まれるのは25%とか、そんな話。 そう、彼女はO型で、俺はAB型。 生まれる血液型はAかBのどちらかということになる。 「べっつにAOとBOなんじゃから構わんじゃろ?」 「構うよ!私だって雅治に1個くらい勝ちたいよ!」 顔を上げ力説する様に、思わず苦笑。 相変わらず型破りな思考だと感心してしまう。 文系科目や音楽の成績は俺よりずっと良いのに。 俺に勝ちたい、だなんて、本当に無茶ばかり言う。 でも。 「」 頭をそっと撫でる。 今ごろ、自分でも下らないことを言っただとか思っているに違いない。 「なぁ、俺と結婚してくれるんか?」 気を引くように、わざと意地の悪い言い方をした。 バッと、弾けるように上げられた顔。 「な、な…!?」 一気に顔が朱を帯びて、目がせわしなくあたりをさまよう。 「だったら俺は、嬉しいんじゃけど。」 君の描く未来に、俺が居る幸福。 くすぐったい言葉と想いにもう一度感謝しながら、再び訪れた静寂に身をゆだねた。 AB型×O型=? 091108 ← 最後まで柚木先輩とどっちに振ろうか迷ってました。 しかしありがちネタですね。うーん… 他のバリエーションも作ってみたいんですが、いまいちネタが浮かばない…