私には自慢して回りたくなるくらい、かっこいい幼なじみがいる。

優しくてちょっと天然でスポーツ万能―明るい笑顔で、クラス中の女の子を惚れさせてしまいそうなほど、素敵な男の子だ。



いつからか、そんな彼と連絡が取れなくなってしまった。

私が中学を転校してからは、文通で繋がりを持っていた私たち、だけど。




ごろんと自室のベッドに転がりながら、今までもらった手紙の束を握りしめる。


「部活が忙しくなったかな…」


一人つぶやきながら彼の姿をぼんやり思い出す。

小学校の頃から、ずっと頑張ってたもんね、野球。




少しずつ疎遠になって行くんだろうなと、覚悟はしていた。
だからなのか、さみしい、と思いつつ妙に割り切ってしまっている自分が悲しい。





書きたいことは溜まるばかりで、だけどやっぱり気が引けて。



そうこうしているうちに、私は最後の手紙をもらってから、一つ年を重ねようとしていた。








誕生日当日は、やっぱりそれなりにウキウキして、朝から家族、学校では友達、部活の仲間に祝ってもらえてすごく幸せで。


ゴキゲンなまま家路につくと、いつも通りに郵便受けをあけた。

そう、いつも通り―一度祈るように目を瞑って深呼吸して、あるはずの無い手紙を期待して打ち消して、そしてゆっくり目をあけて手前に引く。
もちろん、手紙が無いところまでいつも通りに入る。

最近は、無いという事に慣れすぎたから、一連の動作はとても早くなっていた。






だけど、


「う、そ。」


今日はいつも通りにならなかった。
そこには見慣れた―そして何よりも待ち望んだ筆跡のハガキが一枚。

まさか誕生日にハガキが来るなんて、想像こそすれ、実現するとは思っていない。
その“まさか”が起きて、どうして良いのか判らない。

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早く読みたいのに、郵便受けから取り出す指先は震えていた。



恐る恐る裏返すと、まっさらな白地に黒いボールペンで、



“ 誕生日おめでとう!


  お前のコト、忘れてたワケじゃないぜ。

  びっくりさせようと思ってさ!

  驚いたか?だったら成功なんだけど。



  また連絡する! ”


と、お世辞にもキレイとは言えない男の子っぽい字で、言葉少なに書いてあった。




「あは…あははっ!」


読み終えた瞬間、笑いが溢れて止まらなくなる。


びっくりしたよ。
まさか、こんな風にお祝いしてくれるなんて思いもしなかったから。




バースデイカードより無愛想で無骨なハガキ。

まじまじと眺めて口元をゆるめる。


「宝物にするぞ、このヤロー。」


誰にともなくつぶやいて、玄関のドアを開けた。














080920