去年と同じ場所なのに、去年となんら変わりない自分なのに、全然違う。


大好きな場所で、大嫌いな場所だった。


沢山笑ったし、沢山泣いた。


嫌な目にもあったし、きっと、逆もあった。


キレイな思い出だけ、そんな筈は無い。


きっと一言で表すなんて出来ないんだろう。そうするには思い出が多すぎた。




忘れたい、だけど忘れられっこない、大事な場所。







去年の今頃笑い合ってた彼ら、ずっと一緒に居たはずなのに声をかけるのを躊躇った。
1年は短いと言うけれど、私には絶望的な長さだったように思う。
本当に1年振りな訳じゃない。
年末に行った、はず。

去年の卒業追い出しで、祝われたのは自分たち。
それが1個下の彼らになっただけだ。

こんなに近いのに、フェンスを隔てただけでどうしてこんな風に感じるんだろう。



「あ、」
「先輩?」

きれいな赤髪が揺れる。ああ、ブン太か。
私に一番に気付いたのはボレーのスペシャリストこと丸井ブン太。

「先輩、来てくれたんだ!」
「うん。…丸井、元気だった?」

不思議。声をかけられた途端、昔みたいに笑ってる私が居る。

「おぅ!」

丸井は自信満々にピースしながら、白い歯を出してニッと笑う。
愛い奴だ。


それにつられてゾロゾロとやってくる連中。

フェンス越しに視線がぶつかった。








失って気付く、なんてベタだろうか。

戻れると淡く期待していた自分はあまりにも愚かで。


もう、戻れない。
残酷なくらい、世界は目の前に広がっている。










それでも、

「せーんぱい!」
「早くこっちきて下さいよ」

笑いかけてくれる優しさは、変わっちゃいないんだって知った。







来年、彼らは同じことを考えるんだろうか。


ほんの少し先の未来を想像しながら、微笑む彼らと見比べて、私はフェンスを越える。










081017