「一年、かぁ…記念っちゃー記念だろうけど、なぁ…」


独り言のように―というか独り言として呟かれたソレ。


「何が?」


の座る濡れ縁に同じように腰を下ろすと、今度はまさおみ、と俺に向けて言葉が紡がれた。






「なんと、こっちに来てから一年経ちました!」


わーすごい!なんてわざと明るく言うは、出会った時より少し痩せたと思う。
頬に手を当てるとくすぐったそうに目を細めるから、そのまま撫でてやる。


ああ、だけどもう、そんなに経つのか。
平家の仮住まいにが舞い降りたその日も、今日のように穏やかに晴れていたなと思い出す。
もっとも当人は半泣きで、今のような表情は見せなかったが。
よく笑うようになったと思う、コイツも、アイツらも。





「じゃあ、今日は宴でも開くか。」
「え、何で?」


唐突だったとは思えなかったが、俺の言葉を受けると怪訝な顔をした。
その表情には苦しい平家の連中への気遣いもあり、そんな余裕は無いだろうと言わんばかりだ。

だけど、きっとこれはやるべきこと。
頑張ったコイツに礼をしたいと、常々言っている一門なんだから。
それに―


「つれねぇな。お前がここに来て一年って事は?」
「ことは?」
「俺とお前も出会ってちょうど一年、だろ?」
「…あぁ、そっか。」
「忘れてんなよ。」


大事なお前と出会って一年なんだ。
ワンテンポズレて驚いたに軽く噴き出し、コツンと額をぶつける。


「うん、そっか。そんなに一緒に居るんだ、平家のみんなと。…将臣と。」


頬に乗せた俺の手にそっと重ねられた彼女の指先は、暖かく優しい。







他愛もない話に花を咲かせて、二人して腹を抱えて。
けど結局、行き着いてしまうその先。


「なぁ、もし、…もし。」
「何、電話?」


言葉を詰まらせた俺にふわり笑う。
まるでイタズラしたい子供のような口振りだ。
多分半分わざとだろうけど。



「茶化すな。もし、平家を安全なところへ生き延びさせられたらさ。」
「うん。」
「もっと増やそうぜ、二人の記念日ってヤツ。」
「まさ、おみ…」


の目が大きく見開かれる。
初めてする、この先の約束かもしれない。


「そーいうのさ、めんどくせーと思ってたけど、お前となら悪くないと思ってよ。」


何となく気詰まりで視線をそらす。
柔らかい日差しがぬくもりを与えてくれるのとは関係無しに、暑かった。



「知ってる?そういうコト言うと、ゲームじゃ死亡フラグ立つんだよ。」
「…お前なぁ。」


黙り込んでいたのはちょっとは喜んでくれてるからじゃないかと思ったのに、口から出たのはからかうような言葉。
流石にデコピンの一つでもかましてやろうかと思ったが、その前に俺の体にぎゅっとしがみついた。


「うれしい、まってる。」


だから死なないで。
風に溶けてしまいそうなその囁きは、確かに耳に届いて。
震える肩を抱き返しながら、今日の言葉もいつかの幸せになれば良いと、柄にもなく願った。
















090517