口に特有の苦いあじ。 ビリビリ舌が痺れる感じ。 あー、やだコレ。 「におー」 「ん?」 「カム。」 「ん。」 屋上で寝ころんでいた仁王を手招き。 こちらに来たところで、おもっきしネクタイ引っ張ってキス。 ゆっくり離すと、ものすごくイヤな顔、した。 「ちょ、コレ何じゃ。」 「シャボン液。苦い。」 屋上の柵の縁には、仁王から拝借したシャボン玉。 吹いては眺め、眺めては吹きを繰り返し、それが惰性になったのがいけなかったのか運悪くストローからつたって口の中へ。 子供の頃必ず1回はやるであろう事を、中学3年生になって再びやってしまった。 恥ずかしいやら何やらで暴れる訳にも行かず、やるせなくなって持ち主の仁王を呼び寄せた訳だ。 まぁつまり 「それ、八つ当たり?」 「うん。」 私が頷くと、仁王は口に移った苦みに顔をしかめる。多分それだけじゃないだろうけど。 しかしその顔を見ると、こちらも余計苦さを感じてしまう。 私が悪いんですけどね。 「あー、ダメ。無理。 仁王だったら解消してくれるかと思ったのに。」 「何を。」 「シャボン液の苦さ?」 謝りもせずに寧ろ理不尽な言葉を口にした。 仁王もさして気にしてはいないようだけど、さっきからのアタシの行動に少し驚いているのは確かだ。 アタシ自身、無茶を言ってるのは百も承知。 何か飲んだって払拭出来ないんだから一瞬でどうこう出来る訳が無い。 「もっかいしたら、良くなるかもな。」 「―本当?」 仁王が不意に口にしたのは、予想だにしなかった事だった。 一瞬思考が止まったけど、その思わせぶりな言葉と笑顔に素直に乗っかるアタシ。 最初に攻めたのはこっちか。 お互い判ってる、好きになれるはずも無い味だって。 結局それは キスの口実 判っていてやるんだからタチ悪い。 シャボン液より痺れる君の口づけ。
071208 戻 はい、という訳でほかのものアップしようと思ってたのを押しのけてきました仁王君。 やったもん勝ちです。(を 40.5はいろいろやばい。