「ねーコレ、何が入ってんの。」 仁王が持ってきたのは開けても開けても次が出てくるマトリョーシカみたいな箱。 千代子の中の熊じゃあるめぇし!と言ったら古い上に意味違うと突っ込まれた。 早くも箱を開けることに飽き始めた私がぼやくと、仁王は心ここに在らずといった感じで、 「俺の命ー」 とやる気無い一言。 「でももう10個目だよ。箱縮みまくりだよ。 仁王の心どんだけちっさいの。」 最初こそB5サイズくらいのものなら入りそうだったが、今じゃ既に手のひらから少し余る小ささに。 仁王の命って有機物なんですか、てか心臓入ってる訳か。 想像してみたらかなりグロテスクだったので記憶から抹消することにした。 「心外じゃの。それに心じゃなくて命。」 仁王は空を仰いで主張する。 反論があるならこっち向きたまえよ仁王君。 「じゃーコレにおまじないとかしたら思い通りになったりすんのかな。」 「どんな?」 「んー…ヒミツ?」 何となく、まぁそれなりには下心を交えつつ言うと、箱を渡されてから初めて仁王がこちらを見た。 変なところに食いつくんですね君は。 ああ馬鹿、違う、違うから。 そんなところにときめいてる場合じゃ無いから。 段々とぞんざいになっていく扱いに、仁王は酷く不機嫌になって「丁寧に扱わんと俺死ぬぜよ?」と声をかけてきたけどシカトする。 意地半分、好奇心半分にどんどん開け広げていくと、途中で箱の底紙が微かに浮いている事に気が付いた。 逆さまにすると― 「てかさ仁王、これさー…、やめよーよマジで。」 「ん?」 「箱の底の細工」 たまたまズレていたのか、底紙と一緒にぽてっと落ちた。 「…見つけると思わんかった。」 びっくり顔の彼、けどもっとびっくりしてるのは私だから。 「あ、と。これ、って。」 「そ。あれ。 まずは見つけられたけ、ごほーび。」 びっくり顔からぱっと直ったと思ったら、突然接近してきた彼。 目をつむる暇も無くちゅっと可愛い音。 どれだけびっくりさせれば気が済むんですか君は。 各箱には一緒に写ってる写真や、授業中に回した手紙。 1番小さな箱に入ってたのは、私が仁王に初めてあげた赤と白の髪ゴム。 ひっそりと沈めて 「愛が大きくなる度に記念日が出来る度に、この箱の数は増えるんよ。」 だから今日も、また1つ増える箱。
080308 戻 仁王好き。 宝物箱とかだったら可愛い。 何だかんだ言って勢いで持ち物シリーズ2つ目書いてるよ私。