帰りの新幹線。 揺られながら話すのは、今日の思い出。 「京都は雅治でいっぱい、だったね。」 楽しかった、とかその辺りの感想がくると思っていたのに、全く今日は良い意味で期待を裏切ってくれる。 「そーか?」 「雅(ミヤビ)とかお城とか門とか…」 「門?」 意図したことが判らず相づちを打ちながら探り出すと、嬉しいことを言ってくれるが、新しい謎。 先ほどの、“城”の意味するところは理解できた。 じゃあ今度は? 「っえ…あ、うん。仁王、門?」 「ああ、だからニヤついとったんか。」 どもりながら呟いたのは俺の名字の名がつく門。 最後に行った寺の門前で「仁王立ちしろ」と言われた時はさすがに焦ったが、なるほどそれなら。 全く、素直じゃないが愛しくてたまらない。 「何か些細なところでも雅治が見つけられて、嬉しかった。」 「何しに行ったんじゃ、お前さんは。」 満更でもないくせに、呆れたフリをして聞き返したりなんかして。 そんな俺には弾んだ声で話す。 「雅治とプチ旅行?なんか京都がもっと好きになりそう。 また行こうね?」 珍しく彼女から握られた手を、とてもあたたかいと思った。 「今度は泊まりで?」 その手を軽く持ち上げて口付けると、はくすぐったそうに、笑う。 「…ばか。」 「それは肯定?」 「判ってるくせに!!」 「全然判らんナリ。」 「じゃあ判んなくていい!」 「そう言わんと…なぁ、教えて?」 「バカはる!!」 地元まであと1時間、互いに寄りかかって他愛の無いおしゃべり。 君と居た時間を色濃くするために、一生忘れないために、今日最後の思い出を。 不意打ちで残り一枚のカメラのシャッターを切った アルバムに収まったのは、無機質な座席と、びっくりした顔のと少しニヤけた俺の顔。
戻 最後を思いついた際にこれまでの話を見直して、半年でも書き方が変わるんだなぁと思いました。 あとがきではまだ続くとかほざいておきながら、この話で締めとなります。すみません…! 仁王さん編が終わったところで、次はひばり君編に入ろうと思います。 仁王君、様、半年も旅ですみませんでした! ご覧下さいまして本当にありがとうございました!!