髪を切った。
ただそれだけなのにかなり印象が変わった。


日焼けした肌に腕まくりのTシャツ。
ざっくり切られた髪が首のラインをきれいに見せている。



何あれ。

宍戸のくせにかっこいい…!




宍戸が多少ちやほやされてたのは知ってたけど、私は宍戸にぎゃあぎゃぁ騒ぐようなタイプでは無い。
なにしろ、悪友的ポジションなんだから。


なのに、視線を外すことが出来ない。
頬を伝う汗が気持ち悪いと感じても、日差しが痛いと思っても。
見るのは一点。宍戸のみだ。




「何やってんだお前?」

遠目から見るとぼんやりしていたのだろうか。
よりにもよって見ていた本人が怪訝な顔をして近寄ってきた。

フェンスを挟んで1メートルも無い距離に居る宍戸が、今度は直視出来ない。

だめ、近いと恥ずかしすぎて顔見れない…!

「いや、あの、そのぅ…」

言い淀めば深くなる眉間の皺。

「何だよ、はっきり言えよ。」
「あ、っ…」

フェンスに預けた片腕が、がしゃんと音をたてる。

目が回る。ぐるぐるする。


圧迫感と緊張から逃げだしたくて、思い切り、力の限り叫んだ。

「宍戸がっ!いきなりかっこよくなるから悪いんだばーか!!」

あとはもう知らない。
脇目も振らずに走るだけだ。

「はァ!?ちょ、おま、どーいう意味だよ!」

動揺気味の宍戸の声が背中にぶつかっても、ひたすら腕を振る。
言ってしまった事への後悔と、えもいわれぬ高揚感。



ドキン、ドキン。


張り裂けるくらい痛い鼓動は、何かが始まった合図だろう。







熱は上がっていくばかり






080906