休日の別人




高い高い天井を見つめ、体はぬくぬくと炬燵の中。

全体的に暖かな室内に似合いのレゲエは私にしか聞こえない。

この時間を暇と言うか充実してるかと言うかは私の勝手で、何者にも邪魔されずに眠ったり起きたり出来る今は確実に自由だ。




『今平気か?』

不意に鳴った携帯を取ってみると、滅多に電話なんかしてこない彼氏(仮)。

「んー、超平気。」

姿勢を正す事なく間延びした返事をする。

『お前もう初詣とか行ったか?』

「あー…ごめん行けない。」

申し訳ない程の即答。

ただし発言速度はスロー。

『…お前今ドコにいんだ?』

「おー、鋭い。今婆ちゃん家でまったりしてるー。」

『なるほど、な。』

「何で分かったか当てようか?」

『いいよ別に。』

よっぽどの理由が無いと断らないから。

そんなトコだろう。

『随分暇そうだな。』

「いやいや、休みらしい休みを満喫してるよ。」

『確かにそんなふやけた喋り方学校じゃしないしな。』

ころりと寝返りを打つ。

「ジローちゃんと被るし。」

『そういう事考えてんのか?』

「んな訳無いじゃん、思い付いただけー。」

『…んー。』

「どしたー?」

『いや、何か凄ぇ変な感じ。』

「えー何が」

『俺ダレと喋ってんだ…って気分。』

「酷いなぁー、声忘れた?」

『そういうんじゃねぇよ。』

再び寝返り。

「んー?」

『あー…いや。やっぱ忘れろ。』

「いやだ。」

『んでだよ。』

「せっかく充実してたのにこんなモヤモヤさせやがって許さん。」

曲が止まったので、今度は全く趣の違うロックを流す。

たまに思うんだけど、片耳にイヤホン挿したまま電話しててイヤホンの音って向こうに聞こえるんだろうか。

『…俺の部屋に置いてった人形あるだろ?』

「あぁー、あの座ってる馬?」

『今それと向き合ってるから…』

「馬と喋ってる気分?」

『そんな感じ。』

「良かったー猫の人形じゃなくて。」

『は?』

「だって猫だったら空気読んで"何とかだにゃん"とか言わなきゃじゃん。」

『阿呆かお前。』

「今照れてるに1000点。」

『賭けんな。』

「あははいいじゃん、せっかく頑張ってトーンも上げて言ったんだから。」

『あのなぁ…。』

「へへへ。」

『まぁでもようやくと喋ってる感じになってきた。』

「あーホントー?」

これはアレか、BGM効果か?

『一つ聞いていいか?』

「なにー?」

『お前今聴いてるだろ。』

「おおぅ鋭い。今日は冴えてるね。」

『さっきまで何聴いてた?』

「んー亮くんの知らないレゲエの人。」

『分かりやすいなお前。』

「いえいえ、滅相もない。」

『褒めてねぇよ。』

「分かってますー。」

『絶対分かってねぇだろ?』

「鋭い。」

『あのなぁ…。』

「やーばい今すんごい楽しい。変なの普通に喋れるのに。」

『…確かに。』

「照れてるでしょ?」

『だから何でそうなるんだよ。』

「意味は無いよー。」

『いつ帰ってくんだ?』

頭を逸らせて部屋のカレンダーを見る。

「えっとねー…明々後日。」

『マジかよ。』

「何で?」

『いや俺の部活休みが明後日までだから。』

「わー、そいつぁ残念だ。じゃあ明日帰ろうかな。」

『無理すんなよ。』

「そっちこそ、会いたいんじゃないのー?」

『ばッか、調子乗んな。』

「あははー照れてるー。」

『だから』

「はいはい、照れてない照れてない。私が会いたいからで良いですよー。」

『…何も嬉しくねぇんだけど。』

「残念だなぁ。」

『言い方悪いんだよ。』

「いや違くて。」

『は?』

またも寝返り。

「顔見られればいいのにって。」

『…あ、そ。』

「おぉぉ? 今度こそ照れたな?」

『だっ……もう切るぞ。』

「うそん。」

思わず上体を起こす。

急に聞こえる音が彼の声だけになる。

僅かに親と婆ちゃんの声もした。

「あ、じゃあね。」

『あーっ、ちょっと待て。』

「何?」

『ホントに切るのかよ。』

「切るよ、みんな帰って来たし。」

『何だ誰も居なかったのか。』

「じゃなきゃこんなに話しませんー。」

『お前ホントに明日帰ってくんのかよ。』

「母さんが良いって言ったら良いよ。」

『…期待すんぞ。』

「お好きにー、じゃねー。」

『おう。』


母さんが廊下を歩く音がしたと同時に電話を切る。

通話時間は約5分。

あまり電話しない私にとっては、比較的びっくりな数字だった。

「おかえりー。」

「ただいま。」

私はMP3の電源を切ると

「あのさぁ、明日帰るって言ったら怒る?」

実際会いたいのは私かも知れないと思いながら話を切り出した。










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これ書いてる時はベッドから足だけ放り出してレゲエとロック(デフォルトのを)聞いてました。
合宿中暇すぎて書いたからネタらしいネタがないです。
座ってる馬ってのはアレです、CMのやつ。
あれに人形があるかどうかは知りませんが、あの人形があったら欲しいです。
夏の話を冬用にしたので何だかおかしい。

相変わらずこんな感じでやっていこうと思います。
ので、本年も宜しくお願いします。


2009年 劉





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お前これ正月フリーじゃねぇか!とか言う突っ込みは勘弁してください。
保存したままタグ打ちする時間が無かったんでs(ry
ちゃんと承諾はいただきました。(直接)毎度毎度すみません。

劉さんの宍戸さん可愛くて好きです。
六もあいしてます。ちょたも必見です。
言い尽くせないのでこんなところにしておきます。

ありがたく頂きました。ありがとうございました!


狭霧朋真