「ははっ。やっぱり不二って忘れられる程度の天才なんだね!」
「バカだな、それは乾がちょっと…頭がアレなだけだよ。
 可哀想だと思わないのかい?」


私と不二は、良く言えばケンカ友達、悪く言えば犬猿の仲と言った感じで、顔をあわせればにこやかに毒を吐くのが普通。
一番不二に近い人間だったと思うけど、一番変えたい関係でもあったんだ。









今日は関東大会六角戦。
夏日らしくジリジリと太陽が照りつけ、コートがぐらりと揺らいで見えた。
D2で出場した不二は、苦戦を強いられながらも自力でつばめ返しを打ち、勝利を掴む。

その時に乾が言ったセリフが、
「忘れていた、不二は天才だ」
だった訳で。

目があった時にかけたのは、労りの言葉ではなくいつもの毒。
試合後だと言うのに応戦する不二も不二だと思うけど。





またやっちまった。





「ゆーたぁー…あたしどーしてこう…ダメなんだろう…」


試合を見に来ていた裕太をとっつかまえてタックルをかます。
周りの人から「彼女?」と冷やかされていたけど気にしない。

滲む視界の中で必死に裕太の首にしがみついた。


「ちょっさん、いつものコトでしょ?」
「もうやだ。いや。」



自分の性格がキライで。泣いてしまう程キライで。
ならしなきゃいいって言われても、そんなにカンタンな事じゃない。
人間変わろうったって一筋縄じゃいかないの。



不二、好きだよ。大好き。


心の中はいつもその言葉でいっぱいなのに、どうして言えないんだろう。
涙で滲んだ先に見えたのは、憎らしいくらい綺麗な青空だった。







空には入道雲がぽっかり浮かぶ。







080821 意地っ張りヒロインさんと天邪鬼(?)不二! 後編に続く!