「ん゛ー…」


我慢できない。


「どーした?」


武は不思議そうな顔をして、こっちを向く。

あ、やっぱダメだ。
いや、もう少し頑張れ、私。


「ん゛ー…」
「。唸ってたら判んないって。」

「…目、かゆい。」

こするの耐えてたけど、も、限界。
手が問題地に行ってしまう。


「だいじょぶか?」
「ん゛ー…」


大丈夫かと聞かれれば、かゆい、としか言い様が無い。

とりあえず早く収まれと念じるしかないのだ。


「あーあー、こするなって。」
「やだ無理かゆい…」
「こら、だーめだって。」
「お前は保父さんか!無理っ」


誰しも判るだろう、この言葉に出来ない苦しさ。
あーやばい。
何でこんなかゆいのか判んない。


「じゃあほら、、じっとしてろよ?」
「え?」

見かねた武が、何かしてくれると言い出した。
少しだけ手を止めて、武の方を見る。






「あー、赤くはなって無いけど」

で、何しだしたかって、
私の顔を覗き込んで、観察。(だって診察とは言わない)


つまり今目の前に武の顔があるという話。



「ぎゃっ…!」
「じっとしてろって。」
「やぁ…むり…」


普通大好きな人と顔がめちゃくちゃ近くて、平常心で居られますか。
しかもじーっと見られて。
頭固定されて。


「やだ武だめ…!」
「判った判った。
  赤くなってんのはお前だけっと。」

そう言い終えると、固定してた手をぽんっと頭に置いた。


―絶対、判ってやってる。
今の言葉だって、煽る為に決まってる。
そして煽られてる私。何てこったい。



「、まつげ長ぇなー。」

いつの間にやら違う観察始めるし。

「も、いいから!」

離れるに離れられなくてわたわたしてる私の眼前に広がるのは、いたずらっぽく
笑む口元。


「こーいうのってけっこさ。別のコト意識するとふっとぶらしいから。
 どーだ?」
「は?何が?」

それどころじゃないし。
ていうか何がふっとぶんだっ…け…?



「あ…。」


不思議。…武マジック?


「だろ?」




「…うん。」

言われた通りかゆみは全く無くて、気にも止まらなくなっていた。


でも何か釈然としない。





「ありがと…」
「不満そーだな?」
「だって…あんなかゆかったのに…」

というよりは、全部が武の思う通りなのが少し気に入らないってだけだけど。


「そりゃあ俺の愛の力だろ。」

ニッと笑って甘い言葉吐いて、
ちゅっ、と私の目元にキスをして離れた。


「あばばばばぁかぁ!?!?」

「ほら、こするなよ?」
「こすれないよ!武のばかたれ!!」







そう叫んだら武は、うれしそうに微笑んだ。





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