大きな音は嫌い。



それは何かを壊す音だから。









ドンッと机を叩く音がした。

一際大きく感じたのは、席が近いからだろうか。

やったのは同じクラスの獄寺君、と言う人だ。

もっとも私には通り名の方が耳馴染みが良いけれど。



今日も何か気に入らないことがあったのか。

眉間に皺を寄せて、ガタガタと手を置いたままの机が彼の怒りを表している。

そちらを目だけで追うと、山本君が

「まぁまぁ、そう言ってやるなよ」

なんて笑いながら獄寺君を諫めていた。

それが余計に癇に障ったのか、彼の言葉は真逆の効果をもたらして大きな声が教室いっぱいに満ちて行く。






ああ、いやだ、気持ちが悪い。












「このクラスは騒々しいね。」


まだ獄寺君の声が耳に残って、胃が締め付けられていくのを感じていた最中。


凜とした声が響いた。


途端に、すぅと、クラス全体の音が無くなる。

空気が痛いと思えるほどに。


声の主はあからさまに不機嫌な様子で、教室に居る人間をじとりと睨んでそこに佇んでいた。

同じように機嫌の悪い獄寺君が、次の瞬間には静寂を壊して「ヒバリ!」と叫んだのに、先ほどよりも弱々しく思えた。







私は知らない、刺さるようなこの力を。

決して大きな声ではないのに静寂をもたらせる存在を。









万有引力よりも遥かに強く、彼に惹きつけられた。







	黒の存在














090813




高1か高2の3月に考えて放置していた話です。
むしょーに書きたくなったので、奮起して始めました。

いつも私が書く女の子のタイプとはまるきり違っていて、どうなるか自分がドキドキしてます。
全体的に静かな感じになると良いな。