かち 鍵を差し込んで回す。 小さな音をたてて、部屋は私を迎え入れた。 自分の足音と微かに聞こえる時計の音だけがこの家を支配する。 この家には音が無い。 窓を開けなければ小鳥のさえずりすら聞こえない。 テレビは常に黙り込み、コンポは部屋に来てからもずっと眠り続けている。 鳴ることの少ない携帯電話も本当なら必要は無い。 何かの為にと持たされているだけだ。 充電は3、4日に1回すれば十分。 いつもマナーモードで、触れる機会も少ない。 何せ誰も居ないのだ。 天涯孤独の私は今日本に居て、普通の中学生をやっている。 総防音室の1LDKで、ひとり時を刻んでる。 面倒な宿題を片付ける。 食べ物を胃に収める。 シャワーを浴びて、ベッドに潜り込む。 単調な生活だ。 延命だけの為にあるような、生き方。 宿題は少し面倒だけれど、学校でのもめ事はもっと厄介だから真面目にやる。 ご飯はあるものを何となく食べられるように。 インスタントは体に悪いからやめなさいとお言いつけがあったのでそれだけは破らないようにと気を使う。 眠る前は、何も考えないようにしている。 すぐに眠ることが出来るし、それで一向に構わないから。 これがいつも通りの日々。 変わることも無い、変える気も無い。 なのに、 「眠れない…」 何故だろう。 宿題でもご飯でもお風呂でも、そして今も。 あのひとの声が、姿が、頭から離れない。 「風紀委員長、雲雀恭弥…」 漆黒の髪、切れ長の目、肩からなびく学ラン、そして静かなのに強い声。 誰もが恐れる彼が、自分の中でありえないくらい大きく大きくなって行く。 消化できない思いに戸惑いながら、寝返りを打った。 眠れない夜 090825 ← 珍しく管理人が女の子に設定をつけたぞー! って訳でまぁちょいちょいでてくるんじゃないかと。 忘れたらどうしようかと本気で考えていますが。