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ひばりさんは、見かけによらず子供っぽい。 和食がすき、だけどハンバーグも大好き。 一つ、知るたびに嬉しくなって、頬がゆるむ。 彼が私の名前を呼ぶたびに、胸がジンとあつくなる。 このむずむずとした感覚にはずっと慣れないのだけれど、それでもどこか懐かしくて。 本当はあたたかい、人なのだと思う。 忙しいから、と私を雑用係に命じたのに、彼はかなりの割合で一緒に居て。 どうやら今までは日中に行っていた巡回を、帰るときにしているらしい。 「いいんですか?」 そう尋ねようと思ったことは何度かあったけれど、あの静寂を手放しがたくて、いつもひたすら作業に没頭した。 最初は自分から湧き出る欲に困惑したものの、やっぱり今を必死に抱きしめてしまう。 久しぶりにナディアさんが来てくれた時、すごく驚いていた。 何でも、私の部屋に生活感…?だか何だかが出てきたかららしい。 ナディアさんは、いつものように優しく笑うと頭を撫でて、 「愛してるわ」 と呟いた。 私もナディアさんも、少し泣いていたように思う。 泣いた理由はきっと二人とも全然違っていて、だけど私は一緒に涙を流す人が居ることに酷く安心した。 その夜、2人で作ったハンバーグスパゲティはいつも以上に美味しくて、ひばりさんに食べてもらいたいと思った。 いつだって響くものは不愉快で、耳障り。 心地良いのは静寂。 だったはず、なのに。 「ひばりさん、ひばりさん」 「何。」 私の口から貴方の名前が紡がれることが嬉しい。 応えてくれる貴方が愛しい。 何でもない水曜日の夕暮れ、貴方と帰る私。 指を絡めて歩く、なんて幸福。 私は知らなかった。 だけど、そんなの続く訳もなかったんだ。 「―あの現場に居た小娘。」 そうやって、私の幸せはいつも突然終わる。 知ってしまった幸福 ← 091225