夕方の教室。
君を待つ間。
寒くて、ストーブをつけた。


あ?そういえば、私ストーブつけると…。




特別体温



!!」
元気な声が居眠りしてた私をすぐさま起こした。
「て、お前顔赤ェぞ!?」
そして近寄るなり顔を覗き込んで、叫ぶ。
「やー、桃。」
「熱かお前ッ」
理由は見当がついてるから焦んなかったけど、ひたすら慌てるのでとりあえず要 約して一言。


「ぁー…暖房。」
「…暖房?」

狼狽えてた桃が、ちょっと冷静さを取り戻して、とりあえず隣の席に落ち着く。

「体質なのさ。」
「体質?持病とかか?」
「んにゃ。大した事無いんだよ。顔が赤くなるだけだから。」
それがあんまりにも不安気に見えたから、少し笑った。


「赤くなるだけか?」
念押しするように私の言葉を繰り返す。
「ん。他はなーんも無し。」

「にしたって…あーびびった。」
桃はそう言いながらぺたっと私の顔に手を当てた。
「ぁ…」



桃の手の冷たさが伝わる。


「あっついなぁオイ。」
「え、や、まぁ仕方無いよ、体質だから」
予想外の展開にどぎまぎしてしまって、いつも以上にどもってしまった。
「そか?」


離してぇぇぇ…!!

なんて言えない(100%意地悪される)から
「そーそー。しかも熱いものあてられると何でもなっちゃうからさぁ、困ったモ ンです。」
話を広げて、意識を別の方に集中させることにした。

「例えば?」
それを知ってか知らずか、話は進みだす。
「ドライヤーとか湯気とか…。」
「ふぅん、面倒なんだなぁ」

呟くように、桃は言った。




面倒…?

そんな風に考えた事無かったや。
それが当たり前だったし…。

それに―


「んー…そうでも無いよ。」


やっぱり意識は頬に戻ってしまった。


「え?」

って口走っちゃったし。
…まぁ全部言わなきゃいっか。

「ちょっと熱くなるだけで大して害は無いし、―ある意味便利」

どうせだから、少し意地悪に、伏線は残して。

「便利?」
「ん。」





『だって今みたいに手あてられてても、既に顔真っ赤だから赤面しないんだよ。』



―なぁんて、恥ずかしくて言わない(言えない)けど。



「何がだよ?」
「オトメの秘密w」
「む。」
いっつもからかわれてるんだから、今回位翻弄してやる。






「じゃあさ。こーいう事するとどーなんの?」
しばらく考え込んでた風な桃が不意に声をあげた。

何をするのかと思えば、なんと少し立ち上がって、手は離さずにおでこに唇をあててきた。


「桃っ…!!」
「お。熱くなった。
 ―しかも顔、更に赤いな。」
そのまま空いてる方の手で、髪の毛を遊ばせる。
「MAXアレじゃないって事か。」


自分でも判る。
さっきの比にならない位、顔の温度が上がった。



お前、これで絶対赤面してもバレないって思っただろ?」
「ぅ…。」
にししと笑って、思惑をいとも簡単に言い当てやがる。
思わず言葉に詰まった。

「甘えなぁ、甘えよ。」
お決まりの台詞。


「桃だって顔、赤いじゃない!!」
何とか精一杯言い返すと、桃は遠目で窓の外を見た。
「ま、な…。」
耳まで赤いじゃん。





「結局、お互い様って事なのな。」
照れて2人してうつむいて、それでも会話は続いた。
「隠しても無駄なのねー…」
ふぅとため息。
「そーだよ、素直になれよ。」
するとちょっと強気になる桃。
「そっちこそカマかけしないでもっと素直に愛情表現してよ。」
上目で小さく睨んで負けじと言い返す。





そしたら予想外にホントに真面目な顔しだして。
「…そーだな。」
何か妙にムードが漂い始めて。
「ってマジ!?」
「マジ。

 …キス、していいか?」



「…顔が熱いよ…」
思わずそらした目。
「俺も熱ぃ。」
自分の方に向き直させる手。


返事、言葉にできないから目をぎゅっとつむった。



ホントは、少し焦らせるかな、ヤキモキしてくれるかなとか、思ったりしたんだ けど。
そこは曲者、結局バレてしまった訳で(寧ろ逆にいじりたおされる始末)。


…でもまぁ、桃にだけ見抜かれるなら、いっか。






だってこれは君に対してだけ上がる、特別な温度だから。




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桃城ーーーーー!!!!
結構クラスに1,2人は居る気がします、暖房で顔赤くなる子。
てか長…ッごめんなさい。
ここまで読んで頂きありがとうございました!



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