道路の向こう側にあいつがいた。
陽炎の向こう
「たけしーっ」
気付かなかったらはずかしい子だな、私。とか思ったけど。
何かいてもたってもいられなくて。
そしたら武はふっと振り向いた。
「やっと気付いたかー」
微笑しながら叫び返された。
「えっ…」
やっと?
「さっき呼んだんだぜー、何回か。」
「うわっ、ごめっ」
全然気付かなかった。
「暑いのに体力使わせんなよー」
太陽よりまぶしい、って、きっとこんな顔だろう。
ひまわりに負けない明るさで、武は笑った。
「武は何してんのー?」
道路越しに会話を始めた。
「んー?俺はツナん家に行ってた帰りー。
はー?」
「散歩ーー」
「うわっ、あっちぃのによくやるなー」
「判ってるよ!!」
「 !!」
「え?」
大きな車の音。
沢山通って、声が届かなくなる。
武が口を動かしてるのだけ見えた。
「ごめっ、何ー?」
「んーだから… !!!!」
車の数も増えだして、武の姿も見えない。
クソ暑いのに叫ばせてごめん。
何言ってるのか判んなくなってるけど、車の間から見える武は笑顔で、かっこよ
くて。
「武、だいすきっ」
思わず叫んだ。
理屈とか何にも無く、叫びたくなった。
すごい恥ずかしくなったけど、ちょうど轟音でかき消されたみたいで、彼には届
いて無いみたいだ。
あっちには聞こえて無いのに急に照れたりして、不思議に思うんだろうな。
顔合わせた時、絶対動揺するわ…
私が叫んだ後、今度は道路から車が消えた。
ワォ何だこれマジック?寧ろ嫌がらせ?
急にシンとなって、聞こえるのはセミの声だけ。
そんな道路に声が響いた。
「俺もの事、愛してる!!」
あちゃー、聞こえてたのか。
顔、熱いんだけど。
―暑さの所為にしとこうか。
道路を渡って、彼に抱きついた。
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夏ですよ。
バス停で待ってると暑さでぼーっとします。
最近本気で山本に頭を支配されてます。
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