うおう…

少なからずともイヤだと思った。
野球部の団体さんがバスに乗り込んで来たからだ。
しかも荷物が多い。
大きな肩掛けカバンがどかどかとぶつかる。

…参ったな。
参ったけど、悪気あっての事じゃないし。
狭いんだし、彼らなりに頑張って詰めてるし。
少しだけ体を縮こめて、カバン避けに努める。
うん、言わないでおいてあげよう。




「おい河本。カバン。」


そんな私の事を察してくれたのか、カバンの角をどける、ごつごつした手。

びっくりした。正直、気付いてくれる人なんて居ないと思ってた。


そして手の主は、そのまま私の目の前に陣取った。

お礼言えば良かったな…。





ガタガタと揺れるバスの中。
何度も、何度も、ドンと音がする。
その度に目の前の少年の声がする。

「あ、わりぃ山本。」
「カバンかけっぱなしにすんなって冴原ー」
「わりぃって。」

「おい、もっと壁側寄れよー」

「コラ子供が来るんだから座ってんなよ。」

他の先輩らしい人達の声もするのに、山本って少年の声が、妙に耳に残る。
顔を見てみたいと思ったけど、今顔を上げたら不自然だなぁと思ってやめた。


私はいつの間にか真横に立つ少年に、妙に好感を抱いていた。







『次は〜並盛町3丁目〜』

あ、降りなきゃ。

なんだか守られてるみたいに感じて―錯覚にしろ―幸せだったから少し残念だっ
たけど、停車ボタンを押した。
少し彼が身をたじろがせたのが判った。


プシューとドアが開く。
「すみません」と小さく呟くと山本君がどいてくれる。
初めて見た彼に見とれてる暇も無く、バタバタとステップを駆け下りた。


降り立った後、無意識にバスを振り返った。
中に居た山本君と、ばちっと目があう。


彼の笑顔で、幸せってこういう事なんだって思った。




走り出したバスは夕焼けに照らされて、暖かい気持ちで、それを見送った。







モドル 07/1/6 1月も更新しちゃったよ!意志弱くてすみませ…!! 正月ネタとか正直どうしようもない。更新したいよーーー…。 まぁ季節感無く更新しちゃいますよそーりー! しかもこれつづきかきたい な !