くやしい。


さみしい。


もどかしい。



だって足りない。

“愛してる”も“ありがとう”も、伝わらない気がするんだもの。





「何変な顔してるんじゃ?」

横を歩いてた彼が、さっきから黙りこくってる私の手を握って、顔をのぞき込む。

「…そうか、それが素の顔やったか。悪かったのぅ。」

返事がないからって、からかってニヤリと笑う彼と、その横をぼんやりと歩く私。




「なぁ、マジでどうした?」

まだ言葉を発しない私に、とうとう彼は立ち止まった。






からかいの言葉も、いたわりの言葉も、



遠くで聞こえる。


痛みを伴って、鈍く響く。

くやしいのに、うれしいのに、動けなくなる。



「…?」



「あいしてる」「だいすき」「くるしいの」「すきだよ」「ありがとう」「ごめんね」

「だいすき」


口を開くと、途端に止まらなくなる言葉と涙。
こんな短い言葉で、幼稚にもほどがある言葉で、


ねぇこれは貴方に届いてますか?




言うだけ言って後はただひたすらに泣き続ける。
それしか出来なかった。



「好き」「大好き」「愛しとう」「ありがと」「ごめんな」「好き」
「大好き」

そんな私の顔を上げさせて、私の目を見て、紡ぎ出される言葉はさっきの私と一緒、なのに。


頬を薄く朱に染めた顔とか、力強く腰に回る腕とか、私を射抜く目とか、
ずくんって心臓が痛いくらい大きく動いて、



伝わったと思った。





「信じて、良いかな?
 ―伝わってるって、信じて、良い?」
「…そうじゃの。」


全部は伝わらないって思っても、どうしても言葉で伝えたくて、
そんな思いまで受け止めてくれる事が嬉しくて愛しくて、零れる涙もそのままにしてもう一度彼に伝えた言葉は―






伝えたいことば






1周年記念!ありがとうございます。