「はい隼人。」
「あぁ?」
「うっわ柄悪ッ!」


屋上で煙草をふかしていた彼に近寄ると、いつも通りの冷たい反応。
こんな事で逐一傷ついてたら世話無い。
構わず歩みを進め、ずいっと巾着袋を突きつけると、めんどくさそうにこちらを向いた。


「あン?なんだよこれ。弁当?」


そう、弁当。
低血圧の私が、初めて全部作ったお弁当だ。


「ん。食生活偏ってそうだから。」


張り切って作ってきたのはいいもののやっぱり上手い口実なんて思いつかなくて、
どうしようもないなと内心呆れながら受け取りを催促する。


「勝手に決めつけんな。いらねー。」
「うわー…でたよ。」


まぁね、隼人が素直に受け取る訳無い。
でも、私は負けない。


「ああ判ってたさ。素直に受け取ってなんかくれないと思ってた。
 いーですよー山本にあげますから!」


悪態をつきながらそっぽを向けば、少し焦った様子。
山本を出せば動揺することを最近確信したので、彼の名前も忘れない。

これでちょっとは食いついてくれるでしょ、とか思ったんだけど。


「ばっか、お前の料理なんて一般人が食ったら死ぬだろうが。」


死ぬ、まで言われたら貰ってくれるとは思えなくて。彼特有の照れ隠し―のはずもなくて。
流石にコレは凹む。


「じゃあ自分で食べますー。」


悔しいやら切ないやらでどうしようもなくなって、こっちも意地になってしまう。
もう引っ込みがつかなくなってしまった。












だってのに、どうしてそっちが折れるみたいな顔するのよ。


「オラ寄越せよ、食ってやっから。」


手から重みが消えれば、反発の言葉なんて出てこない。
恐ろしく乙女な自分にため息。


「…作ってきた甲斐なかったなぁ…」


もう少し喜んで欲しかったなんてワガママ?
貰ってくれたんだから充分か。
でも、ねぇ?





あーとか呟きながら空を仰ぐ私を見ると、隼人は眉間に皺を寄せて弁当箱を地面に置いた。


「…サンキュ。」
「マジでっ!?」


小さく呟かれた言葉に過敏に反応すれば、少し赤かった隼人の顔がわっと色味を増す。



「…うめぇ。」


いつもなら照れてそれ以上言わないのに更に続けてくれた言葉が嬉しくて、涙が出るのを拭って私もありがとうを言った。





照れ屋と意地っ張りのありがとう




祝1周年!ありがとうございましたっ!