裏庭、一人で居るには絶好の場所だ。 雲雀さんが見回りに来るのを恐れて不良たちは学外に行くし(それでも見つかってるけど)、屋上は定番だから裏庭。 少しジメジメしてるとか、別にどうでも良い。 私を泣かせてくれるスペースを与えてくれれば、それで。 もう良いよと言ってくれればそれが合図。 決壊って言葉以上に当てはまるものは無いだろうな、ってくらいに溢れる水分。 声押し殺すのはツライけど仕方無い。 バレたくは無いから。 ナカナカ止まらないなぁと妙に冷めた自分が居る。 その傍らで苦しいって叫び続けてる私も居る。 混在する感情を持て余していたら、不意にガサリという音。 まずった。誰か来た。 雲雀さんじゃなきゃ良いな。 「…?」 あ、何だ。クラスの子。 疑問符つけて私の名前を呼んだのは、野球部エースの山本武君。 知ってる、でもむしろ半端な知り合いだと余計気まずい。 何て言おう。 私が数秒ためらっていた間に彼は私が泣いていると認識すると、何も言わずに抱きしめてきた。 正直山本君は彼氏でも何でもないし、ほとんど喋ったことも無い。 なのに彼の腕の中はあたたかくて、あれ、おかしいな、余計に止まらない。止められない。 力強い腕が、「泣いちゃえよ」って、言ってくれてる気がしたから。 「…ごめん。」 罰が悪くなって山本君を押し返した。 抱きしめてきた山本君も山本君だと思うけど、それにすがった自分は何だって言うんだろう。 冷静になると余計に恥ずかしくて死にそう、だ。 「なんで?カワイー顔見れたし、役得?」 すると山本君はさらりとこんな事を言う。 ニシシと笑った彼は、暗に気にするなと告げていて。 うわ、かっこいい。コイツ腹立つ。 ちくしょう。だったら「ありがとう」なんて言ってやんない。 だから、お礼の代わりに腕を背中に回して力をこめる。 コトバじゃなくても伝わる気持ち 見上げると、「おぅ、」と返事が返ってきた。
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