丸井君の彼女が、『誰々と言えばどういう動物だ』という話をしていたのを耳にしていたらしく、
仁王君の彼女であるさんもまた、夕暮れの部室で唐突に仁王君に話を振りました。


「やっぱベタにカメレオン?」


言葉と共に、パキッと小気味良い音が静かな部室に響く。
それはさんが仁王君を待つ間に食べていたプレッツェルで、仁王君は「太るぜよ」なんて呟いて頭突きをくらっていました。


「で、何がカメレオン?」
「いや、雅治が。」
「俺?」
「そ。カメレオンみたい。」


にこにこと楽しそうに笑う彼女は新しいプレッツェルを口に運びます。


「変幻自在…ということですか?」

着替え終わった私もようやく口を挟めました。
仁王君のイリュージョンのことなのかと思いきや、さんから飛び出したのは思いがけない理由。


「まず、恒温動物っぽくない。」
「ああ、確かにそうですね。」
「…そうか?」


その発言に怪訝な顔をする仁王君。
本人に自覚が無いとは恐ろしいことです。
冷えた手を背中につけておどかしているのはどこの誰だと言うのでしょう。


「なんかねー、自然に抗ってない感じがする。でも人間には反抗してる感じ?」


って言うのかなぁと、さんは釈然としないらしく首を傾げ呟きました。


「何じゃそれ。俺変人みたい。」
「いや、“みたい”じゃないし。」


彼はと言えば、柄にもなく少し口を尖らせ、むっとした顔。
こんな表情、身内にしか見せないでしょう?
普通は詐欺師だとか冷たいだとか、正反対のイメージを持たれているのに。







こんなところにもほら、変わる色。









的を得た生き物だと思ったけれど、さんがあまりにもきっぱり言うものだから、


「その彼に付き合う貴女も変人になりますよ。」


と、少々意地の悪いことを言ってしまいました。


「うーん…じゃあ常人で良いや、雅治も。」
「そうそ、俺はふつーの恋する男の子じゃ。」
「はずい!やめれ!!」
「ちゃんに焦がれとるんよ。」
「ぎゃーばか!!」


それはどういう反応をしてくれるのかが気になったからだったんですが、どんどん変わって行く話題に置いて行かれてしまい、ほんの少し苦笑い。


変わり身の早さと言い、やはりカメレオンカップルなのではないでしょうか…




余計な飛び火を避けるため、今度は口に出さずに、


「帰らなくて良いんですか?」


と、またもや別の話をしている二人に声をかけた。





1秒後の君と僕













Thanks 2nd Anniversary!
いつもありがとうございます!
flyingToy 狭霧朋真