遭難しました。ソウナンですか。



目が覚めるとまず波の音が聞こえた。
そしてだんだんハッキリしてくる意識。
しばらく倒れたまま目だけを開けぼーっとする。

船が転覆して、ボートで逃げた。
そこでぶっつり意識が無くなったから気絶して…とにかく何とか生き延びられたようだ。

そうだ。つぐみと彩夏…!!

勢い良く起きあがるとフラリとして気持ち悪かったが、気にせず周りを見渡した。
彩夏もちょうど目覚めたところだったらしく、私を見つけると少しほっとした顔をして駆け寄ってくる。

「さん、無事だったんですね!」
「何とかね…」

頭は砂だらけで体調も最悪だったが、死ななかったんだから幸いなんだろう。

「あ、つぐみ!」

駆け戻った彩夏と…誰だろう、また別の青ジャージの子がつぐみを覗き込み名前を呼ぶと、彼女もうっすらと目を開けて、そして呟いた。

「ここは…?」





跡部君、とやらが前に立って云々説明している。

ここは彼らの目的地である事。
先生と…つぐみのお父さんが行方不明である事。
そして助けが来るのは早くて5日、遅くて2週間。
それまでは自給自足で生活するしかないという事。


彼らは私たちに対して、何もせずに過ごしてもらっても構わないと言った。
手伝いますと彼女たちは言った。

「…お前はそれでいいのか?」

彼女たち、という言葉通り返事をしなかった私に、手塚君と言う人―本当にタメなんだろうか―が尋ねる。



「…いいよ。」

正直言えばやりたくなかったし、どうしてこんな見ず知らずの人たちと過ごさなきゃいけないのか―まぁそれは相手からしても同じだろうけど。
ただ、私も何かやらないといけないと思った事も嘘では無く、加えて一人だけやらないなんて居心地の悪い展開は御免被りたかったので、そう答えてしまった。



今、先の見えないサバイバル生活が始まりをつげた。
皆精一杯生きる努力をするのだろう。
これが運命である事を疑わずに…






070818