「そこのお嬢さん、仕ご「やだ」
「仕事せんのか?いけん子じゃの〜
 お仕置きするぜよ。」

ヤツは仕事の時間が来るたびに、近付いて私に声をかける。
正直な話、うっ「ぎゃあ!!」
「くすぐり弱いんか?」
「弱くなっ…いっ!!」
「ナくんならもうちょっと色気出しんしゃい」

何かと言えば、脇腹を撫で回されている。
私はくすぐりに強い方では無い。
回りくどい言い方をしなければ、弱い。
くすぐりに強い人間が酷くうらやましく思う。
伝授して欲しい…

仁王はこの反応にしめたと思ったのだろう、くすぐりで思考を阻んだばかりか、
そのまま私の体を後ろから押さえこんだ。
見ようと思えば後ろから抱きしめられているようにも見えるかもしれない。
無駄な誤解は避けたいが、そんな悠長な事言ってる余裕も無さそうだ。

「さ、何隠しとるか言ってみ?」
「あんたには…何もっ…!!」

言うことなんか無い、と言いたかったのに、執拗に脇腹を掴んでくるから言葉に出来ない。
心底楽しそうにしやがって…

「ほう、俺には包み隠さずさらけ出しとうって?
 大胆発言、じゃの。」

ククと笑うと、息が耳にかかる。
くすぐったいんじゃヴォケ!
ああ全く腹が立つ。

だいたい覚悟しろというから、また追い詰められるんじゃないかと警戒していたのに…
くすぐったり脅かしたりつねったり―たまにセクハラしたり、やっている事は低レベルだ。(セクハラはある意味ハイレベルだけど
はじめのあの射抜くような言葉とは全然違う。
何なんだろう、全然つかめない男だ。




―そんな事を考えている場合じゃ無かった。

「やだっ…やめっ…」

抵抗しようと必死に声をあげる。
柳生君真田君赤也君…誰でもいいから助けて!
と、それはもう
来ないと殺す
ってくらい念じていたんだが

ドンッ!

むしろ仁王本人に突き飛ばされ、そしてヤツは何も言わずに走り去っていった。


ちょっ…何だアレ。
羽交い締めにしといて突き飛ばして逃げるってどんだけ失礼なんだ。
私は助かったから…まぁいいけど。
ますます意味が判らない。


やけに焦った後ろ姿を見て思う。


仁王雅治。
アイツは全てが未知数だ。



070909