「仁王。」
「んー、何じゃ参謀。」

正直今話しかけられとう無いんじゃが。
まぁそれを言うのすら煩わしく、生乾きの髪をいじりながら適当に流す。


「真田からの伝言だ。夕飯後に少し集まるから忘れるな。」
「夕飯後って忘れようが無いじゃろ…あいつも相変わらず訳判らんのぅ。」
「そうか。ならば構わない。
 ところで、彼女を追いかけないのか?」
「…それもいらん心配やの。」

参謀はタチが悪い。
俺が機嫌悪いってのも、話しかけられとう無いってのも、今一番触れられたく無い話題だって事も絶対把握しているくせに。
イライラする。


「話はそれだけか?俺は作業に行くぜよ。」

限界だった。
だからいつもはうんざりしてる作業を口実に立ち上がると、参謀はため息をついた。

「彼女を…を壊すなよ。あのままでは壊れる。」

ヤツが向いた方をちらりと見ると、心ここに在らずと言った風に虚ろな目をした彼女。
探索の帰りからあんな調子だ。
俺が何を言っても無駄だろう。
声だって、とっくにかけたさ。


「…知らんよ。」


手遅れじゃない事を祈りながら、裏腹な言葉を遠くに投げた。





070923