俺は馬鹿だ。


コイゴコロってヤツは、確実にアイツを女として見とったのに。
アイツが女だって、全然強くなんか無いただの女の子だって思い知らされたのはたった今で。



はたはた

その表現が一番あっている気がした。
涙は、音もたてずにただ落ちていくばかり。

次第に抑えきれなくなったのか、かすかに肩を震わせ、声が漏れないように口を必死に押さえつけてしゃがみこんだ。


この生活に、辛さを感じないヤツか?
必死に隠している何かの重さに、苦しまないような人間か?

自分のしてきた事の罪深さに自嘲するしか術がなくて、途方にくれそうだ。


俺は声をかける事すら、許されないはずなのに。


「にお…っ」


小さく呟かれた言葉。
衝動で走り出す愚かな俺を許して。


ぐっと腕を引いて立たせた。

「に、におっ!?ばっ…」
「泣け」

問答無用、胸板にアイツの顔を押しつけると、最初は胸を叩いて抵抗してきたが、服の裾をぐっと掴むと小さく嗚咽をもらした。















幸村君に言葉にした事で、整理がついた。
そう思いたかった。
だけど現実はそう上手く行かなくて、苦しくて一人で泣いた。

仁王に見られたのは恥ずかしくていたたまれなかったけど、縋ってしまった。



「ごめん。ごめん…」

仁王は苦しそうに顔を歪めて、そう呟いて。

どうして仁王が“ごめん”なの?
謝らなくちゃいけないのは私。
騙して、狡くて、なのに貴方を好きになった私。
貴方の優しさを利用して、何も言わずに去るつもりの私。


「ごめん…ごめんね…」

私の口からも同じ言葉。



出逢わなければ、良かった。

こんなに苦しい思いをする為に、出逢いたくなんて無かったよ。







071117