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「セーンパイっあっそびっましょっ!」
「のがぁッ!!赤也君重い!」
「それ位にしといてやれよ。」

幸村が笑いながら赤也を制するのを遠くで見ている。

「な、息抜きに昨日の話実現しに行こう?」

そう言って幸村は、悪戯っぽく笑った。





「海だーっ」
「あんまりはしゃぎなさんな。転ぶぞ。」

何でも、幸村とコイツは昨日、泳ぎにいく約束をしていたらしい。

確かに山側に居なかったなと思い返す。
無意識に彼女を探すようにまでなった自分に拍手を送りたい。
変わるモンだ、人間ってヤツは。

今までのように興味で食い潰す気は毛頭無い。
起きるのは懺悔と、それでもひたすらに膨れ上がっていく愛情。



体調は大丈夫だろうかとは思ったが、昨日よりも幾分良い顔色と、きっと彼女への配慮であろう幸村の誘いだった為、誰も何も言わずに付き合う事にした。



彼女がぱさりとパーカーを脱ぐ。
鮮やかな赤の水着が白い肌に青い海に良く映えた。

「似合うッスね!」
「あー、うん、ありがと…」

照れると頬も赤く染まった。
こそりと、
「仁王君は言ってあげないんですか?」
と柳生が耳打ちしてきたが、察してくれ。
俺の顔も同じくらい赤いって事を。
午前といい、こんなに赤面するタイプでは無かったのだが。
本当に有り得んなと一人苦笑した。



しばらくはちゃぷちゃぷと泳いだり水かけあったりしていたが、目的が生物探しに変わったらしい。
一生懸命岩場をのぞき込んでは何かを発見し、幸村や丸井に報告して笑った。
岩場は危ないと思うんじゃが…
楽しそうなアイツらに口出しするのもどうかと思って、黙って眺めていた。

しかし、しばらくして赤也がオロオロしながら騒ぎ始めたのでそうもいかなくなった。
何かと思って見れば、彼女の手から赤いものが流れている。
言うまでも無く、血だろう。
反射的に駆け寄る。

「バカ。やけ、気をつけんしゃい言うたじゃろ。」
「におっ…!?」

彼女の反応を無視し、指をすくい上げて口まで持っていく。
水着よりも赤い気がするそれは、舐め取ってもまたキレイな指先をうっすらと染めるものだから、早く治れと小さく願って、最後にわざとらしく傷口をなぞった。


「痛い?」
「痛いよばか!」
「何かすげー光景。」


彼女はパッと手を振り払って俯くと、幸村のところへダッシュして行った。



赤に染まる君。

出来ることなら、君に染められる俺のように、全てを俺の手で染めたい なんて事が頭をよぎったけど、少し気障すぎて俺には似合わんなと思った。




071201