呆気なく来た終わりとサヨナラ。


その夜告げられた真実は最早どうでもいいもので、そんな事よりも「ごめんね」と何度も謝る彼女はキレイだった。


送別会、とでも言うのだろうか。
彼女らが一足先にこの無人島を去る事になったので、大量の料理を作り最後の日を飾る事になったのだった。
まぁとりあえず俺らは、やっとマトモな飯にありつけるという事でかなりがっついていたが。
しかし、結局みんなこの5日間、アイツらに救われたのは確かだったんだろう。
誰も彼もしきりに話しかけては、別れを惜しんでいるようだった。


―泣きそうな顔して、笑いやがって。
泣きゃいいのに。
まぁ他の2人も…か。

なんて、そんな事で機嫌が悪い訳じゃ無いが。
これ以上みっともなく嫉妬して傷つけたく無い。
傷つきたくも、無い。


跡部が用意したと言う空に咲く大きな花は、あっという間に散って、唯一儚さだけを残した。





また寝付けない―今度ははっきり理由も判ってる―ので仕方無くベッドから起き上がり、ぼうっとした頭で部屋を出てきた。
後ろで神尾辺りが叫んでいた気もしたが、聞こえなかった事にする。

少しだるさが残る足は、自然とアイツと良く喋った憩いの場に向いていた。



どかっと座り込んで夜空を眺める。
苦しくなって息を吐き出すが、ちっとも楽にならない。

別れるのが寂しいのは、こちらも同じだ。

「キツいのぅ…」

誰に向かう訳でも無い言葉は、暗い林の中に溶け込んで行って消えた。


人を想うってのは、こんなに苦しい事だったのか。
アイツを思うと、いつも胸のどこかをギュッと締め付けられている感じがする。
望まないと決めたのに、理性と言う名の蓋を開ければ、あっという間に本音で満ちて行く。
自分の細胞全部が、彼女を求めている。
こんなに想いが大きくなるなんて、想像もつかなかった。

離れたく無い。
そばに居て欲しい。
行かないでくれ。


ひたすらそればかりがリフレインする。


好きだ。
好きなんだ。



切ないという言葉の意味を初めて知った気がして、そう思ったら余計に苦しくなった。





「におっ…」


そんな俺の耳に飛び込んだのは、一番聞きたくてたまらなかった愛しい声だった。





071208