ことばにすること


糸が切れたように走り出してた、
その形容はこんな時に使うんだなって思う。
肩で大きく息をすると、彼が居るはずのドアをノックした。

「仁王、居ますか。」
「ちょっ…危ないっスよ何出歩いてるんですか!」

出てきてくれたのは神尾君で、私を見るなり驚いた。

「大丈夫だから!
 仁王、居ない?」
「でも「仁王ならば」

柳君が声を遮る。

「さっき急に出ていった。
 しかしそろそろ就寝すべきだ。悪いがいつもの所、探してきてくれないか。」
「ちょっ、何言ってるんスか柳さん!」
「上手くやろうとしなくていいが、素直にな。」


どこまで気付いてるんだろう。
彼は私の手に懐中電灯を乗せると、静かに促した。

「ありがと…」
「だが本当に必要以上は厳禁だ。いいな?」

最後に念を押すように付け加えられる。
その優しさに涙が出そうで、必死にこらえて頷いた。




071215