雨、か…

降らんと念じてみたが、やはり降ってきた。
アイツは早々に帰ってしまって一人だ。

…濡れて帰るか。


走るんもダルかったから諦めて歩いて行く事にした。
だが、校門近くまで来て、外から見覚えのあるカサが近付いてきた事に気付いた。


「げ、間に合わなかった!におっ!」

叫んだのは、さっき帰ったはずの、アイツ。

「…何でおるんじゃ?」
「あ…いや、と、とりあえず入って!」


そう言うと腕を一生懸命伸ばして、俺をカサの下に収める。
そのカサを取り上げて、コイツが濡れんようにした。

「あ、ありがと!」
「…どうした?」

はっきり言って俺も混乱している。
何で、ここに。


「…カサ、無いって言ってたから。
迎えに来た。」

雨の音で消されそうなほど小さな声で、ぼそりとつぶやいた。
素直じゃないから、照れて目も合わせん。
まだ制服のままで、どうやら家からすぐにとんぼ返りして走ってきたようで。


たまらんくなって(って俺は真田か)、カサを手放して思い切り抱きしめた。


「ちょっ、にお…」


条件反射じゃ。
後で文句は幾らでも聞いてやるから。


雨に濡れて怒るコイツに、
「ありがとうな」と「愛しとうよ」と、
口づけを。








仁王さんでした!