一年契約 好きな人に祝ってもらえない誕生日ってのは、案外味気無い。 最近、行きつけのバッティングセンターにバイトの人が入った。 バイトって事はつまり年上を意味しているんだけど、正直歳とかはあんまり興味ない。 営業用かも知れないけど、あの喋り易さやちょっとした時の表情。 全部気になったりする。 たまに良いトコ見せようと思って速い球にしたりホームラン狙おうか、とか考えて、 実際1回試したんだけど、反応は芳しくなかった。 理由は後々分かったんだけど、その理由に託つけて皮肉るつもりは全く無いから思い出さない事にした。 その辺りから、この感じがただ目新しい人に対する興味じゃなくて、もっと違うモノだって気がしてきた。 で、完全にそうだと思ったのが誕生日。 学校帰りに大荷物持って行くのも何か押し付けがましいっていうか、今まではそんな気を遣わなかったのに 敢えて行かなかった。 次の日に行ったら、どうやら暫くバイトを休むみたいで、昨日もいなかったそうだ。 そもそも毎日居た訳じゃないのに、来ないと分かるとちょっとつまらない。 そんな日が1ヶ月程続いた次の日曜日。 この物足りなさにも慣れ初めてしまってた頃だった。 いつもの様にセンターの自動ドアが開き、中に入ると、目の前のベンチに座り飯を食おうとしている人が1人。 「あ。」 人間ってやっぱ思わぬ事態になると声出しちゃうもんなのな。 俺の声に反応してか、その人は顔を上げるとニヤッと笑って 「よう、少年」 と言ってきた。 「あれ、サン辞めたんじゃないんスか?」 「失礼な。これでも同じバイト1年は続けるんだから」 1年…。 すると遠くから店長の声がした。 よく聞こえなかったけど、長期間休む奴はゴメンだ、的な事だと思う。 あえて無視をしているのかサンは持っていたサンドイッチを一口食べて、 何か思い出した感じで俺を指差すと、 「ん、そうだ」 「?」 「24日誕生日だったでしょ」 え…。 「そうスけど、何で知ってんスか?」 するとサンはふふん、と鼻を鳴らして 「並中OBですから」 と言った。 「OGじゃないんスか?」 と返すと、あ…そうかOGだ…とサンは呟く。 「でも何で…?」 正直な話、ちょっと動揺してた。 サンは会話の合間に減らしていたサンドイッチを平らげて 「いや、24に並中行ったんだよ先生に会いに。 そしたら何か女の子達が妙に盛り上がってるし。 で、聞き耳立ててたら山本君が誕生日で何たらーって聞こえたからさ。」 と言った。 俺はちょっと期待を込めて 「じゃあプレゼントとかあったりするんスか?」 と聞くと 「それが準備してないんだなぁ」 とサッパリ否定。 なんだ…と思わず口走っちゃうと、それが聞こえたみたいで。 「仕方ないなぁ… じゃあコレあげるよ」 と傍らに置いてあったモノを差し出す。 「昼飯の残り」 「…何スかそれ?」 「牛乳パン。嫌いじゃないでしょ?」 結構嬉しかった。 けど、何か足りない。 と、遠くからまた店長の声。 「あーい」 サンはそれに答えると、荷物を引っ掴みカウンターに向かって急ぎ歩き出した。 「サン」 「なんだ」 「来年は頼んます」 「はいよ」 急いでる時にこんな事言った俺も俺だけど、サンこの返事の重大さに気付いてんのかなぁ…。 まぁいいや。 やった。 ========== おめでとうございました。 何にも祝えてないし遅れたけどね。 その逆境を見事ネタへと昇華させた私に拍手!(ぅわ ごめん朋真氏。こんなん送りつけて。 うーんと…サイト開設9ヶ月記念おめでとうございます(平伏 ☆☆☆☆ というわけでいただきました。強奪とか、してませんからね!笑 うれしい限りです。超ニヤニヤしてます。うわぁい! ありがとうございます。武かわいいです。 こんな劉さんの素敵な文章が読みたい方はリンクからどうぞw マジでありがとうございました!!(平伏 狭霧朋真 戻