参拝しようと石段を上っていて、ふっと疑問を抱く。

「なぁ、ここって何の神社なんだ?」
「え、だから安徳帝の…」
「いや、何がメインってか…」

上手く説明できない俺の意を汲み取ってくれたようだ。
だが…

「え、安産だよ。」

またもや予想だにしなかったことを、ケロリとした表情で言いやがった。

「安産?」
「看板にデカデカと書いてあったよー?
 見てないの、将臣君。」

言われて振り返ると、なるほど、その通りのことが書かれていた。

「安産って…」
「まぁまぁ、別に安産のことじゃなくてもさ、ね?」


良いのか?と思ったが、その考えすらすぐに忘却の彼方へと追いやられた。



「二人でお参りすると、まるで夫婦みたいだね。」

髪を耳に掛けながら、さも何でもない風に言うもんだから堪らない。

本当にコイツは、俺をどうしたいんだ。
―今日の俺は、頭ん中が忙しすぎる。
無意識に左耳の宝玉に触れて存在を確かめた。

「俺と夫婦に見えて嬉しいのかよ?」
「うん!さ、お参りしよ。」

何でもない風を装って尋ねると、至極当然と言った風で…
自惚れて良いのか?

「将臣君はやく!」

真意を掴ませないまま手招きを寄越すにゆっくり歩み寄りながら、胸の内の期待を持て余した。
















「みんなにお土産買えて良かったね。」
「九郎あたりはいっやな顔しそうだけどな。」

つまらないからと帰りは違う電車に乗って、家路に着く。
の膝の上には“重盛の人形焼”と書かれた袋が大量に乗せられている。
水天宮の近くにあった人形焼屋は、何故か平重盛の名がついていて、そこが有名だとか何とかだとかの理由でその店の人形焼を八葉のやつらの土産にすることになったんだが…

源氏の九郎が見たら怒るに決まってんじゃねぇか。
土産に俺(では無いけど俺?)の名前って。
他の奴らだって今日二人で出かけたこと根に持ってたら…
負ける気はねぇけど、正直、やべぇな。


「あはは、大丈夫だよ。コレ美味しいし。」

どこらへんが大丈夫なのかさっぱり判らない理由を述べ、くすくす笑うに、最早突っ込む気も起きない。
呑気にも程があるだろ、と思ったが、それよりも、右ポケットの存在が気になってたってのもある。

「お、そうだ。これ。」
「え?」

何気なさを装っての顔の前に紙製の小さな袋を突きつける。

「今日の礼。」
「将臣君が?私に?」
「それ以外何があるんだよ。」

は目をぱちくりさせてから、袋と俺とを見比べて戸惑っていた。
言わねぇと判んない間柄でも無いだろと更に顔の方に近づけると、ようやく受け取って、

「ありがとう」

と呟いた。

かさかさと音をたてて袋から引っ張りだす様子を眺めながら、にやける口元を律する。

「お、守り?」

中身を取り出した途端、が大きく目を見開いた。

「そ。見ての通り、水天宮のな。」
「それって…」
「ああ、安産守りだぜ?」
「いやいやいやいや!!何で!」
「あー、察しろ…って言ってもこれは無理か。」

当然の如く安産守を差し出されたら、混乱するのも判らなくはない。
一応まだ高校生だしな。

しょーがねーな、なんて後ろ頭を掻きながら、の耳に口を寄せる。

「俺とお前の子供が、産まれてきますようにってな。」
「…将臣君…!」
「夫婦に見える、じゃなくて夫婦になってさ、一緒にまた水天宮に行こうぜ?」

喜ばせてもらってばっかりじゃ悪いだろ?
プロポーズにしちゃ安いし、まだまだ先だけど、お前にちゃんと贈りたくて。


その反応ならやっぱり、自惚れじゃないってことだよな?


は、お守りを胸に抱きしめると、こくりと頷いた。








暖かな贈り物










←前編





080802




うちが書くと明るいけど後ろ向きじれっな白龍の神子様になります。


無駄に長ったらしくなりましたが、まぁ水天宮に実際行って思いついた話です。

うわぁい将臣君かっこいー!!(ゲームの
どうしたらあんなかっこよくなるんですかーーーーーーーーー

なかなか将臣君的な喋らせ方(OKとか!!)が書けなくて難しかったス。
そして最初は敦盛が居る予定だったんだけど…まぁ予定は未定ですよね。


一応時間軸は大円団でみんなの帰り方探してる時期…ってことで!
迷宮やってないので詳しくは判んないのですが。


そして着々と遙かが増えてくマジック。