白石、誕生日おめでとう


ホワイトボードにデカデカ書かれた文字は私のもの。







部室のドアを開けると、紙テープまみれの白石が、ポカンとした顔で立ち尽くして居た。


「あ、来たん?サプライズ成功やねぇ。」

「小春…」


小春の言葉に、白石がぎこちない動作で振り返る。


「ほんっっっと、何でジャンケン負けたかなー私。すごい損だよ…」


私は苦笑いしながら、それでも極めて明るい口調でおどける。


今回のサプライズには、白石がまわり――主にレギュラーを忘れるほど何かに集中させることが不可欠だった。

パーフェクトテニス部長だけあって、去年のサプライズはものの見事に失敗してしまったからだ。


そういう訳で、工作員の私は一日中、とにかく白石が気にするようなミスをし続けたのだ。

ラストのだめ押しに白石があんなに怒ったのは、ストレスが溜まっていたからに違いない。



そりゃあ、みんなとキャーキャー言いながら飾り付けしてる方が数千倍良かったに決まってる。

何が楽しくて、「ごっめーん、ボール全部ぶちまけちゃった☆」とかやるんか!楽しかったけど!

しかも財前と一氏もだったのに、いつの間にか裏切られてたとか、ほんと最悪だ。










「…」

「っ、今デレんのなしだよ白石……!」



ことのあらましを語ると、白石はとてもばつの悪そうな顔で私の名前をつぶやいたものだから、思わず硬直する。


嘘でしたーなんて笑ってお祝いするつもりだったのに、

まずい、ばか、まじめやろー、謝るなし!


「ちょ、タンマ、トイレ!!」


何だか自分が思ってた以上に、白石に怒られたのが堪えてたらしい。

きっとそれは、嫌われちゃうんじゃないかって、頭をよぎったからだと思う。


雲行きが怪しくなる前に、私は再びドアノブに手をかけ部室から飛び出した。












走ってるから痛いのか、それとも別の何かなのか。

そんなのは言うまでもなくわかってる。


昇降口の何年だか知らない靴箱にわざとぶつかって、そのまま崩れ落ちる。


嗚咽が止まらない。

声を抑えようとすると、もっと胸が苦しくなった。


















聞き慣れた靴音が、私の真後ろに止まった。

ざり、と砂が擦れる音がして、彼もまた同じようにしゃがんだのだと分かった。


「しら、いし…」

「堪忍な……」


ためらいがちな声が耳をかすめる。

白石は私の手を取って、ゆっくりと立ち上がらせた。

気まずくてどうしようもない。

せっかくの誕生日なんだと気合で涙を止めれば、乾いた頬がヒリヒリと痛んだ。




なのに、泣き顔を見られたくなくて顔を伏せた私の頬に触れ、


「おおきに」


と笑った白石が居たから、私はまた泣いてしまった。









曇り空のハッピーバースデイ










and more...?

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090509






盛り上げすぎた。(自分のテンション的に

本当は

バーカ、サプライズじゃボケ!キャッキャワイワイ!

の予定だったんだけど、…うん、あれ?
これじゃメロドラマみたいやん。

勝手にそうなりました。
ふーしぎー


白石に抱き締められたら孕みそう、てか孕むよね絶対。
んで、白石は相手のためならちゃんと怒れる子なんだろうなぁ。うらやましい。


という訳で、あまりにしょっぱくなってしまったので、台詞オンリーのおまけ書きました。
無駄にいちゃこいてるだけですが、よろしければ and more...? からどうぞ…!!